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自動車産業インフォメーション

2021年5月14日

20年度のカー用品売上高 プラス確保、ドラレコ好調が下支え

コロナ禍が自動車業界に影を落とす中、用品市場の堅調ぶりが浮かび上がっている。自動車用品小売業協会(APARA、小林喜夫巳会長)が公表した2020年度の用品売上高は、前年比0・4%増の4021億7508億円と微増で着地。

感染拡大初期には2割近く売り上げを落とし厳しい滑り出しとなったものの、いち早く回復基調に乗せて4千億円の市場規模を4年連続で死守した。背景にあるのは、さまざまな分野を取り扱う用品ならではの強みだ。

近年市場をけん引するドライブレコーダーの好調やタイヤ・ホイールの需要回復、ケミカルの成長など、多様な商品群が市場を下支えした格好だ。

売上高統計を月別に追うと、一度目の緊急事態宣言が発令された20年4月に前年同月比18・4%減の落ち込みを記録した。

感染症の全貌が掴めない中、一部の店舗では「売り場を閉鎖しピットのみの営業とした」(オートバックスセブンの広報担当者)例もあり、同月の客数も前年と比べて70万人近く減らした。

もっとも、消費税増税前の駆け込み需要が生じた前年の反動から3割超の売り上げ減となった同9月を除くと、市場は回復基調にある。実際、5月は同8・1%減に持ち直し、6月は同1・8%増と早くもプラスに転じた。

用品市場と同様の上下動を描いたのが中古車市場だ。20年4~6月の中古車登録台数と軽四輪中古車販売台数を合わせた数字は、4、5月に前年割れしたものの6月にプラス転換した。

感染リスクの低い移動手段としてマイカーを求める動きが顕在化し、低廉で短納期な中古車に注目が集まった格好で、用品市場も車両稼働の回復に合わせて売り上げを伸ばした様相だ。

この間、特徴的な伸びを見せたのがケミカルだ。「巣ごもり期間に自宅で愛車を洗車・補修する機運が高まった」(日本オートケミカル工業会の淵田昌嗣理事長)ことで、5月以降は概ね前年同月比10%超のプラスで推移。

美装化ニーズは自家洗車・補修にとどまらず、キーパー技研が増収増益とした21年6月期業績予想をさらに引き上げるなど、コーティング事業者にも追い風が吹く。

経済の先行き不透明さが新車購入の足かせとなるとの見方も広がる半面、「保有車を長く奇麗に乗りたいとのニーズは当面続く見通し」(同)で、各社は需要定着への期待を示している。

ドライブレコーダーも底堅さを示した。20年4~6月の国内出荷台数が6四半期ぶりに100万台を割り、近年の好調ぶりに歯止めがかかったとの見方も広がったが、7~9月は一転して統計開始以来最多の135万台を記録。

10~12月、21年1~3月も前年超えで推移した。カメラ機能の高度化が進む中、パイオニアが20年10月に、JVCケンウッドもNTTドコモと組んで同11月に通信型レコーダーを発売。

通報機能や簡易安全運転支援システム(ADAS)機能を搭載した製品は損害保険会社向けに採用例があるが、一般ユーザーにも販路が開かれたことで、レコーダーの位置付けにも変化が生じそうだ。

レコーダーの好調を下支えした要因として指摘されるのが、20年6月の改正道路交通法に盛り込まれたあおり運転などの厳罰化だ。用品店などでも制度改正の告知を積極化し増販につなげたが、市場の安定的な成長のためには、こうした特殊要因に伴う一過性の需要増だけでは賄えない。

通信型レコーダーがサブスクリプション(定額課金)形態で提供される背景にも、収集したデータの活用に加え、収益の安定化を図る狙いがある。

こうした動きの模索は他分野にも広がる。下期の用品売り上げをけん引したのが降雪に伴う交換需要が生じたタイヤだが、暖冬で伸び悩んだ前年からの反動という側面もある。

ブリヂストンの国内営業幹部は「気候に左右される季節商品として売り続けるだけでは限界がある」との認識を示す。こうした中、同社は今春、タイヤのサブスクリプションサービス「モボックス」の提供を開始。

価格競争に捉われない販売形態で利益率を高めるとともに、交換サイクルの安定化にもつなげる狙いで、今後他メーカーも追随するかどうかが注目される。

新車・中古車で浸透しつつあるサブスクが用品の世界でも台頭した20年度。給油所のコイン洗車機でもサブスクが登場するなど、こうした動きがいっそう活発化することは必至だ。

膨大な数の既販車をターゲットに廉価多売の戦略で巨大市場を築いた用品業界もまた、新たな局面に差し掛かっている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞5月7日掲載