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2021年5月11日

自動車流通業界、進む働き方改革 優秀な人材確保狙い

コロナ禍を契機に多くの企業で新たなワークスタイルを模索する中、自動車業界でも新たな手法を採り入れる動きが活発化してきた。在宅勤務やリモートワークが一般化したことで、オフィスに縛られない働き方も定着。

日本の企業では当たり前だった転居を伴う転勤をできるだけ少なくしようとする新たな仕組み作りも始まっている。

少子高齢化の進展で〝働き盛り〟の人口が減少していく中、住みたい場所や求めるキャリアなど、働き手の希望を実現できる職場づくりを進めることで、人材の優秀な定着、確保につなげる狙いだ。

全国各地に自動車用品店を展開するオートバックスセブン。本部社員にとっては全国規模の転勤も避けられなかった。こうした中、今年4月、オフィスで働く部門を対象に転勤後も住まいを変えずに働ける新たな制度を導入した。

転勤者が希望すれば、現地勤務が必要な場合に限って出張扱いで赴任地に出勤する新たなスタイル。転勤者に支給する諸手当を出張費に充当して運用すれば、結果的にコストも圧縮できると見込んでいる。

こうした新たな働き方を始める転機となったのがコロナ禍だ。昨年春の緊急事態宣言下では、社員の感染防止のためにリモートワーク化を進め、本部社員の出社率は17%に低下。

その後も出社率を30%に抑えるなど、決められたオフィスに毎日出社しなくとも業務を進められる事が分かった。本人の意に沿わない転勤を回避できる環境を整えることで、従業員満足(ES)も高められるとみている。

自動車向け金融や故障保証などを手掛けるプレミアグループは、単身赴任の削減に向けた取り組みに乗り出している。昨年夏に物理的な営業オフィスを設けない「ビジネスサイト」の仕組みをスタート。

栃木、群馬、茨城、広島の4拠点にサテライトオフィスを設け、東京からでも出張ベースで営業活動を行えるようにした。

今年4月には関西や九州などにも対象エリアを拡大。これまで家族と離れて暮らしていた社員も転居を伴う転勤をせずに働ける環境を整備することで、30人弱いた単身赴任者を15人弱にまで減らした。

全国規模の転勤が当たり前というイメージが強い大手損害保険会社でも転勤スタイルの見直しが進んでいる。各社とも全国転勤型と希望する都道府県内で働く地域限定型の2種類のスタイルを並立するのが一般的だが、その枠組みにも変化が現れている。

東京海上日動火災保険は、都道府県よりも広い一定のエリア内限定で転勤を伴う「エリアコースワイド型」を2016年から始めた。今年度4月の新卒入社社員のうち、3分の1がワイド型を選択するなど、同コースの選択率は年々上昇しているという。

一方、三井住友海上火災保険は昨年8月、社員自ら社内の希望するポストに求職する「社内フリーエージェント制度」をスタートした。これまで日本の多くの企業では、希望する部門があっても定例の人事異動に身を委ねるしかなかったのが一般的だ。

こうした中、同社では自らのキャリア形成を能動的に考え、実行できる仕組みを用意することで、働きがいや、やりがいを高めやすい職場の実現を目指している。

コロナ禍によって世の中の価値観は、以前にも増して多様化している。仕事や職場に求める人々のニーズも同様に様変わりしつつある。

自動車業界が100年に1度の変革期を迎え、従来の枠にとらわれない発想や取り組みが一層求められる中、さまざまな環境の人材が活躍できる職場づくりが欠かせなくなりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞5月1日掲載