自動車産業インフォメーション

日刊自連載「自動車整備の現在地 日整連の白書から」(上)

2021年4月30日

日本自動車整備振興会連合会(日整連、竹林武一会長)は、2020年度版「自動車整備白書」をまとめた。自動運転や電動化など次世代技術の実用化や特定整備制度の施行で、整備業界は変革の真っただ中にある。

だが、技術やルールがいくら高度化しても、国内市場は少子高齢化に伴う人口減少で自動車保有台数も減少に向かうことが予想されている。技術の進化と国内市場の需要が縮小する「新たな時代」が始まる整備業界の現在地を確認する。

19年度実績による総整備売上高は、前年比0・6%増の5兆円6561億円となり、4年連続で増加した。19年10月の消費税増税の反動減や新型コロナウイルス感染拡大の影響はあったものの、「前年から好調な個人消費に支えられてわずかに増加した」と白書は分析する。

整備要員1人当たりの整備売上高(自家を除く)も同0・8%増の1428万円と4年連続で増加し、総売上高と同等の伸び率を記録した。

継続検査台数も3273万台と例年と同水準の規模で推移。20年に新型コロナウイルスの感染拡大に伴って営業時間の短縮や補修部品の入荷遅延などが一過性のマイナス要因になったものの、自動車保有台数と安定した継続検査台数に支えられた。

一方、業界全体で事故整備売上高は緩やかに減少している。先進運転支援システム(ADAS)搭載車の普及で、今まで起きていたような交通事故が減少して入庫台数も減りつつある。

ADAS搭載車が入庫すると、高価なセンサー類の交換やエーミング作業などで整備単価は上昇しているものの、それ以上に入庫台数減少のインパクトが大きくなっている。

業態別の総売上高は、専・兼業が同1・4%増の2兆6650億円、ディーラーが同0・3%増の2兆7749億円とともに増加した。ディーラーの事業場数は専・兼業の約4分の1にしか満たないが、総売上高は3年連続で上回った。

今後もメンテナンスパックをはじめ通信機を搭載したコネクテッドカーによる囲い込みや、メーカーからの技術情報を直接入手できる強みによって売上高の差はさらに広がる可能性がある。

今後の総整備売上高見通しの土台になる自動車保有台数は、10年度にリーマンショックの影響で一時的に減少したものの、エコカー減税による新車販売の減少や平均車齢が伸びたことで19年度は8185万台になった。

中長期的には社会構造の変化やモビリティサービスの普及で「所有から使用」へのシフトが加速することで減少する見通しだ。同時に継続検査台数も減少することが予想される。

ただ、現在の統計データから想像すると、需要の縮小は現実味に乏しい。これが危機感を醸成できない要因と考えることができる。

他方で次世代技術への対応に尻込みしている整備事業者も少なくない。整備の高度化対応で20年4月から設けられた運行補助装置など電子制御装置整備の認証取得は、導入初年度は全事業場数に対して大きく伸び悩んでいる。

ただ、先進安全自動車(ASV)やハイブリッド車、電気自動車など電動車の普及は、交通事故ゼロの社会や温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現という目標からも明らかだ。

自動車整備業界の現在地は、未来への投資を続けるかどうかを慎重に検討するべき大きな分かれ目に位置している。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞4月26日掲載

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