国土交通省は19日、「技術安全ワーキンググループ(WG)」を開き、今後の安全技術の具体化に向けて議論を開始した。現在、報告書の策定を進めており、その中では従来の短期・中期的な目標に加え、新たに長期的な視点を取り入れて方向性を定める方針。

報告書案には、自動運転技術の導入や安全運転支援システムのさらなる高度化によって、将来的な交通死亡事故ゼロを目指す内容を盛り込んだ。併せて2030年の事故犠牲者の削減目標も設定する。国交省は今回の議論を踏まえて詳細を詰めながら、次回以降のWGで数値目標の検討を進めていく考えだ。

報告書案は全3章で構成。第1章では交通事故や安全技術の現況などを説明し、第2章でこれまで国交省自動車局が取り組んできた対策の実施状況をまとめる。今後の施策や政策の方向性については第3章で紹介する形となる。

安全技術の進化の基盤となる第3章では、4つの重点項目を設定した。まず「歩行者・自転車等乗員の安全確保」では夜間などの検知性能を高めた衝突被害軽減ブレーキなどの実用化を進める。

「自動車乗員の安全確保」では衝突時の加害性を考慮したアセスメント試験の追加にも取り組む方針。「自動運転関連技術の活用・適正利用促進」では、高度な自動運転技術に対する安全基準の策定をはじめ、ユーザーの過信や誤解を防ぐ啓発活動を強化する計画を打ち出す。

「加害事故の防止」では、重大事故につながりやすい大型車や近年問題となっている高齢運転者の安全対策をテーマに不可欠な技術をまとめていく。これらの事故原因には社会的背景の影響が大きくみられることから、タイトルを含め実態をより反映した内容に修正していくもよう。

同WGは交通政策審議会の陸上交通分科会自動車部会に設けられている。報告書は政府の「交通安全基本計画」に基づき、国交省が今後取り組むべき具体的な施策を示すもの。

交通安全基本計画は、21年度からの第11次計画が3月下旬に決定された。同WGは、第10次計画の終了と次期計画のスタートを視野に入れて、昨秋から新たな対策を検討してきた。