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2021年4月5日

日刊自連載「特定整備から1年 電子的な整備への対応は進むのか」(下)

2020年4月に施行された「特定整備」制度は整備業界にとって一大転機となった。しかし、これは整備の電子化の第一歩に過ぎない。今年10月には「OBD(車載式故障診断装置)を活用した車検制度」が始まる。実際に対象車が入庫するのは24年(輸入車は翌年)以降となるが、指定整備事業者には確実な対応が求められる。

同時に12カ月点検に新基準「OBD診断」が設定される。引き続き、23年1月には電子化された車検証が導入される見込みだ。車載技術の高度化に対応し、国を挙げて整備の電子化を推進していくことになる。

■相次ぐ新制度の導入

OBD車検は法定スキャンツールを用いてインターネット経由で合否判定を行う。自動車技術総合機構のサーバーに故障コードを送信し、判定結果を受信する。OBD診断は、現行車を含めた車両(大型特殊自動車、被牽引自動車、二輪自動車を除く)の12カ月点検に導入され、点検結果を点検整備記録簿に記載することになる。

特定整備の対象のほか、エンジン、ブレーキ、エアバッグなどを含む警告灯の点灯や継続した点滅を目視で確認する。異常がある場合は、スキャンツールで故障診断し、修理することが必要だ。

こうした流れに対して、整備事業者の認識には開きがあるのが実情。電子的な整備に対して、例えば跡継ぎのいない高齢の整備事業者などの場合、「新たな設備投資や新技術の習得に後ろ向きになりがちではないか」(埼玉県の車体整備事業者)とする見方もある。

これまでエーミング作業の経験がないことも、二の足を踏む要因になっているとみられる。

■求められる技術革新への対応

国土交通省では「今後先進運転支援システム(ADAS)搭載車の普及に加え、電気自動車(EV)の販売台数が増えることは確実だけに、各事業者にも整備技術の高度化に取り組んでもらいたい」(佐橋真人自動車局整備課長)と話しているように、特定整備対象車の普及拡大と車載技術の高度化は止まらない。

ホンダは、世界初の自動運転「レベル3」搭載車を市場に投入した。これに合わせ、特定整備制度の水準を上回る基準を販売店に導入した。車載技術レベルの進化に伴い変化する設備や技術に、今後も対応していくことが必要となる。

従来の整備技術が経験を積み重ねる中で磨かれてきたのと同様に、電子的な整備技術も習得する必要があるが、その対応が早急に求められている。それには適切なツールを用い、有用な情報を得ることが近道だ。

FAINES(整備情報提供システム)を提供する日本自動車整備振興会連合会では「整備事業者をどれだけサポートできるのか」(木場宣行専務理事)を重視。検索性の向上や情報の充実に取り組むことでバックアップする方針だ。

特定整備制度から1年。整備電子化への第一歩を踏み出したわけだが、どのようなスタートを切ったのか。この差が今後どのように影響するのか注目される。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞3月31日掲載