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2021年3月15日

自動車メーカー各社 車載防災用品、広がるアイデア

東日本大震災の発生から10年が経過し、改めて防災への意識が問われ直す中、販売現場ではクルマとセットでの防災用品購入を促すための取り組みが進んでいる。

毛布や簡易トイレなど、急場を凌ぐための消耗品はもちろん、インバーターや発電機、車中泊グッズなど、災害時に限らずさまざまな場面で役立つ商品にも注目が集まる。

メーカー各社が純正用品として開発する車載防災キットでも、女性向けに特化した商品が登場するなど、消費者ニーズを踏まえた多様化が進む。

予期できない緊急事態に備えて費用を投じてもらうためのハードルは決して低くないだけに、各社は商品そのものの差別化と魅力発信を通じて、ユーザーの安全啓発と用品収益確保の両得を目指す構えだ。

自動車メーカー・ディーラー各社はいずれも、新車購入時のオプションとして車載防災キットを取り揃える。

飲食料やタオル、簡易トイレなどの消耗品をひとまとめにしたものが一般的である中、マツダが昨年7月に発売した「車中泊セット」では、内容品を収納する防水使用のバッグそのものにも緊急時機能を付加。簡易的なバケツとして使えるほか、詰め物をすれば枕にもなるなど、バッグ一つまで無駄のないパッケージングを実現した。

同9月にはホンダアクセス(白土清成社長、埼玉県新座市)が「防災安心セット(女性用)」を発売。肌着や衛生用品など、避難先での入手が難しくなりがちな女性向け用品を充実させ、災害時の不安解消を図っている。

ハード製品では、電源確保のための各種機器が注目を集める。ホンダやヤマハ発動機など、従来プロ向け発電機を手掛けるメーカー各社は、ラインアップ紹介に合わせて非常用途での機器活用例をホームページで解説。

近年の新車ではAC100㌾外部給電機能を備えた仕様も普及しつつあるが、車種は一部の電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)などに限られ、最大電力も1500㍗にとどまるケースが多い。

クルマでの避難が長期化した場合や、家屋の倒壊や瓦礫の堆積などにより車両とのアクセスが悪化した場合、大出力の電気工具の使用が必要になった際などでも確実に使える独立型・並列運転可能な専用発電機は、依然として災害時ニーズが高く見込まれる分野だ。

地震や風水害はもちろん、足元では新型コロナウイルス感染拡大の影響により車中泊を強いられる例もある。自動車流通の起点となるメーカー自身が防災用品の備えを啓発することの影響力は大きい。この10年の教訓を踏まえた商品力の向上と周知の強化が、ますます重要になりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞3月12日掲載