2021年3月8日
経産、環境両省 カーボンプライシング導入議論加速
政府が自動車産業の将来成長にも影響しそうな「カーボンプライシング」の導入議論を加速している。環境省は2日に開いた中央環境審議会地球環境部会の「カーボンプライシングの活用に関する小委員会」で、「炭素税」の制度設計に向けたコンセプトを提示。
経済産業省も1日の「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会」で、「国境調整措置」について検証した。
両省は今後、これ以外の手法についても議論を深め、温室効果ガスの低減と日本の経済成長を両立できるカーボンプライシングのあり方を早期に形にしていく考えだ。
環境省が示した炭素税のコンセプトは、中長期的に国内経済や国際競争力の強化につなげるために経済成長の時間軸に沿った設計であるべきとしたほか、分野ごとに異なる脱炭素技術の確立状況などに応じた技術の時間軸にも沿った設計も必要とした。
加えて、供給サイドでの投資やイノベーションだけでなく、脱炭素につながるサービスの普及など需要面を含め、あらゆる主体の行動変容や経済の構造転換を促せるものが良いとした。同時に、国益にかなうことも重要なポイントとして挙げた。
炭素税の課税イメージも例示。低い課税水準で導入した上で、将来にわたって段階的に課税水準を引き上げていくことをあらかじめ明示する。これにより、制度導入当初の激変緩和を図りつつ、その先の予見可能性を高めることで、早期の脱炭素化を促す効果も狙う。
一方、税収は一定段階まで次第に高まるものの、温室効果ガスの排出削減が進むに従って税負担が低減していく姿を描いた。
有識者からはカーボンプライシングを有効に進めていくために、炭素税は効果的との意見が多かったが、どのような形で課税するかや税収の使い道などでさまざまな意見が出た。
一方、産業界からは制度の中身や運用の仕方によって、多くの企業にとってペナルティーの要素が強まり、意欲が低下する恐れもあるとして慎重な検討を求める声も少なくなかった。
また、経産省の研究会では地球環境産業技術研究機構(RITE)による国境調整措置のさまざまなシミュレーションを報告。欧州連合(EU)のみや日米EUで炭素関税を課した場合、相手国が報復に出たケースなど複数のパターンを紹介し、日本への経済影響を抑えるための望ましい姿などが議論された。
双方の会議体は両省の所管分野などが異なることから、足元では別々に議論を進める形となっている。
しかし、数名が委員を兼務しているほか、両省の職員がオブザーバー参加するなど連携を図っている。梶山弘志経済産業相は「最後は一緒に議論することになるだろう」とし、最終的には両省が一体となった結論を導いていく考えを示唆した。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞3月4日掲載