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2021年2月22日

政府 「カーボンプライシング」の導入、検討本格化

政府で炭素税などの「カーボンプライシング」の導入検討が本格化した。経済産業省は有識者で構成する研究会を新設し、17日に初会合を開いた。環境省も今月初め、制度導入の可能性を探ってきた小委員会を約1年半ぶりに召集。今後、両省は連携して検討を進める考えだ。

日本の温室効果ガス排出量のうち約2割は運輸部門であり、自動車関連産業にも貢献が求められる。しかし、単純にユーザーや事業者の負担が増す形となれば、産業競争力が削がれる恐れがある。

政府は「成長に資するカーボンプライシング」を条件に、環境対策と経済成長を両立できる制度構築を目指す。

経産省は新設した「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会」で、カーボンプライシング導入の議論を開始した。初会合では諸外国における脱炭素化に向けた取り組みやカーボンプライシングの検討状況を報告。

国ごとに取り組みや成果が異なる気候変動対策のバランスをとるため、関税などで課金する「国境調整措置」についての欧米のスタンスも示された。同研究会は今春までに数回の議論を重ね、夏頃に中間整理を示す方針。さらに年内に一定の方向性を取りまとめたい考えだ。

環境省でも中央環境審議会地球環境部会の「カーボンプライシングの活用に関する小委員会」で、2019年にまとめた「中間的な整理」以降の国内外の動きの報告を受け、議論が再開。今後、最新の国内外の動向に基づいて複数回の議論を予定している。

日本でのカーボンプライシング導入の機運が高まるのは今回が初めてではない。ここ四半世紀においても、経済成長への懸念から浮かんでは消えてきたのが実情だ。しかし、ここに来て、一気に熱を帯びている背景には世界で脱炭素の潮流が加速していることが大きい。

政府は50年に温室効果ガスを実質ゼロ化する目標を掲げ、35年に乗用車販売の全電動車化に踏み切ることも決めた。時間に限りがある中で、脱炭素化の国際公約を実現していくには、カーボンプライシングの導入が避けて通れない情勢となりつつある。

こうした中で、政府は環境と経済の難しいバランスをとれる制度を追求する考え。それぞれの会議体では、経済界からのヒアリングも実施していく方針で、小泉進次郎環境相も「産業界の声に丁寧に耳を傾ける」と約束をする。

梶山弘志経済産業相も「結論ありきではなく、幅広く議論していく」とし、さまざまな可能性を検証して自動車を含む国内産業の成長につなげられる制度のあり方を探る構えだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞2月19日掲載