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自動車産業インフォメーション

2021年2月10日

部品メーカーの業績改善 通期見通し、上方修正相次ぐ

自動車メーカーの生産回復が、部品メーカーの業績改善を下支えしている。2020年半ば以降、自動車生産が部品各社の想定を上回る回復ぶりを示していることに加え、固定費削減を中心とした自助努力の成果が表れている格好だ。

足元では半導体の調達難に伴う自動車メーカーの減産を危惧する声はあるものの、通期では上期の低迷を挽回し通期業績予想を上方修正する企業が相次いでいる。

トヨタ自動車系部品メーカーは、大手7社、中堅6社がそろって通期業績予想を上方修正した。トヨタの車両生産が急回復しているためで、営業利益段階では収支ゼロを予想するファインシンターを含め全13社が黒字を見込む状況だ。

デンソーの松井靖経営役員は、2日に行った決算会見で「トヨタグループ向けが中国を中心に好調だ。地域別では日本と中国が対前年で約15%、アジアや北米、欧州が約10%上振れしている」と説明している。

メーカー系列外サプライヤーへの恩恵も大きい。特殊鉄鋼材や自動車部品を提供する大同特殊鋼は、自動車関連の受注について第3四半期で前年同期の水準まで回復しており、この傾向は継続すると想定。売上高、各利益で通期業績予想を上方修正した。

小糸製作所も上方修正を実施。自動車生産が予想を上回っていることに加え、LEDヘッドランプといった高付加価値製品の拡販推進を織り込む。日本精工は半導体調達難による自動車メーカーの生産減少をリスクと見ているものの、不透明な状況を勘案しても自動車生産台数の回復を背景に業績の上振れを見込む。

売上高、営業利益を上方修正した古河電気工業の福永彰宏取締役兼執行役員は「自動車関連市場が力強く戻ってきている。中国市場は第3四半期あたりでコロナ前の水準に戻っており、北米市場も来年度にはコロナ前の水準にほぼ戻ると予想できるまでに回復している」と指摘する。

車両電動化の波に乗り、業績を伸ばすのが日本電産だ。通期では営業利益を前期比42・8%増の1550億円を見込み、従来予想から150億円引き上げた。当期利益も150億円積み増し1200億円とした。

パナソニックは、円筒形車載電池の売り上げが増加。第4四半期も堅調な販売推移を織り込み、車載領域がけん引する形で通期を上方修正した。オートモーティブセグメントの通期売上高は前回公表値から900億円増の1兆3400億円を見込む。

コロナ禍を背景に各社が注力する固定費削減効果も業績回復を支えている。マクセルホールディングスは営業利益について、好調に推移した事業の収益改善や、各事業部門における固定費削減を中心とした原価低減策の徹底による効果が想定以上になったと説明した。

自動車生産の回復は素材産業にも波及している。三菱ケミカルホールディングスは、自動車用途を中心とした需要回復や、MMA(メタクリル酸メチル)などの市況上昇が想定を上回ることなどを織り込み、通期業績予想を上方修正。

高機能エンジニアリングプラスチックやリチウムイオン電池材料などの機能商品セグメントは、コア営業利益を前回予想値から30億円増の540億円に引き上げた。

住友ベークライトは、車載用途や第5世代移動通信システム(5G)などの需要増加で販売好調な半導体関連材料や、高機能プラスチックも自動車市場の回復で想定以上の販売を見通すことなどを織り込み、通期業績予想を各段階で上方修正した。

上方修正が相次ぐ通期業績予想だが、足元では車載向け半導体の供給不足に伴う自動車メーカーの減産や物流の停滞といった懸念材料が顕在化している。

JVCケンウッドは1月29日の決算会見で、半導体不足で部品調達に影響が及んでおり、納期が不透明な状況が今夏まで続く可能性があると説明。通期業績見通しは据え置いた。

NTNは通期業績予想を各段階で上方修正したものの、第4四半期については世界的な半導体不足の影響額として最大値(自動車でマイナス100億円)を織り込んだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞2月6日掲載