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2021年1月29日

政府、ワクチン輸送体制構築急ぐ トラック物流が重要な鍵

政府が、新型コロナウイルス感染症を予防するワクチンの輸送体制の構築を急いでいる。正式に供給契約を結んだ米ファイザー社は昨年12月中旬、鹿児島県と沖縄県への輸送について検証を実施。物流会社による陸送を基本とし、一部空輸でワクチンを運べる手段を確立した。

残る米英2社の製薬会社も、すでに国内配送網の確認に向けた準備に入った。政府は2月下旬までにワクチンの接種を開始したい考えで、準備にかけられる時間は残りわずか。特に全国の市区町村へ安全かつ確実にワクチンを届けるために欠かせないトラック物流が、今後の感染対策で重要な鍵を握りそうだ。

ワクチンの輸送体制の準備状況は、政府が22日に開いた「新型コロナウイルス感染症対策本部」で報告された。政府はファイザー社と1億4400万回分、米モデルナ社と5千万回分、英アストラゼネカ社との間で1億2千万回分のワクチンの供給で合意している。

このうち、ファイザー製ワクチンは摂氏マイナス75度もの超低温での温度管理を要するなど、極めて厳しい輸送条件が求められている。政府は国民への早期接種を実現するため、これまでに類を見ない物流体制を、いち早く立ち上げる必要に迫られていた。

すでに、昨年末には海外にあるファイザー社のワクチン工場から、日本の空港の保税エリアへの搬入までの国際輸送の検証を終えている。しかし、難しいのはここからの配送や管理で、同社製ワクチンは超低温状態の維持だけでなく、揺れにも弱いという特徴がある。

このため、国内輸送では同社が用意したドライアイスを入れた特殊なボックスでワクチンの品質を保持しながら運ぶ。数多くの地域への配送を担うトラック事業者にも、繊細な対応が求められることになりそうだ。

一方、モデルナ社製は同マイナス20度、アストラゼネカ社製のワクチンは同2~8度での温度管理になると言われ、ファイザー社製よりは国内配送の要件も緩和されるとみられる。しかし、通常の医薬品よりも厳しい制約があるのは確実。

新型コロナのワクチン輸送が、国内の物流事業者にとって今までにない経験となることは間違いない。ただ、こうして積み重ねたノウハウや知見が、今後の国内物流のさらなる高度化に役立つことも期待される。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞1月26日掲載