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2021年1月27日

兵庫でMaaSプロジェクト 産官学連携し地域の移動手段

住民の高齢化や公共交通の赤字路線廃止などを背景に、移動手段の確保が困難な地域が全国各地で増加している。その解決に向けて、兵庫県南西部の西播磨地域では、複数交通手段を最適に活用して移動の利便性を高めるMaaS(サービスとしてのモビリティ)の実現を目指す取り組みを展開。

18日から同地域の播磨科学公園都市で次世代型モビリティサービスの提供と、それらを路線バスにシームレスに繋ぐMaaSシステムの実証実験が始まった。産官学が連携し、地域の実情に即した新たな交通体系のあり方を模索している。

実証実験は、近畿経済産業局(米村猛局長)や兵庫県、県内で路線バスを運行する神姫バス(長尾真社長、姫路市)などが「西播磨MaaS実装プロジェクト」として開始した。同都市内で超小型電気自動車(EV)と電動キックボードのシェアリングサービスを提供するとともに、自動走行カートを運行する。

3市町(たつの市、上郡町、佐用町)にまたがる同都市は研究機関や企業が集積する一方、地域の交通手段が乏しい状況にある。住民の高齢化が進んでおり、移動手段の確保が喫緊の課題となった。

参画企業・団体は実証実験を通じて「域内の回遊性を高め、地域活性化を促すとともに自家用車がなくても移動しやすい環境づくり」(近畿経産局地域経済部)につなげていく考えだ。

実証実験では複数の次世代モビリティを試している。超小型EVのシェアサービスは、3カ所のポートを中心に都市内全域で利用可能とした。その一方、電動キックボードのシェアサービスは東京ドーム30個分の敷地面積を持つ理化学研究所播磨事業所構内限定で展開している。

都市内の路線バスとタイミング良く接続する運行ダイヤで固定ルートを周回する自動走行カートも試行する。ルートを周回するごとに非接触型のワイヤレス充電設備に戻る仕組みも試している。完成すれば、走行から充電まで全自動で可能なシステムができあがるという。

自動走行カートには遠隔監視システムを導入した。運行中のカートには管理者2人が常時乗車しているが、都市内の光都プラザに置く現地本部でもカート周辺の状況を確認できる。システムは、自動走行技術を含め名古屋大学(名大)未来社会創造機構・モビリティ社会研究所が管理する。

実証実験中、都市内には計16台の次世代モビリティを配備する。これらと既存の路線バスを繋ぐMaaSシステム「西播磨MaaS」を運用している。

利用者は事前登録を済ませれば、ウェブ上の専用ページで一般的な経路検索と同じ感覚で最適な移動ルートを検索できる。目的地までの所要時間や利用する移動手段に加え、次世代モビリティの予約も可能だ。

MaaSシステムの構築・運用も名大モビリティ社会研究所が担う。すべてのモビリティには位置情報を発信するデバイスが装着されており、現地本部で運行状況などを把握している。利用状況の偏り具合など様々なデータを集めることも実証実験の目的の1つという。

都市内の研究機関などに協力を依頼し、18日までに100人超がMaaSシステムに登録した。次世代モビリティやMaaSの社会的受容性も実証実験の検証課題。シェアサービスのポートなどに担当者を配備し、利用者の反応を吸い上げている。「利用者の声を集め、ユーザー目線の交通体系の実現に生かしていく」(同部)構えだ。

実証実験は一部を除き31日まで実施する。実施後、実験結果で得たデータを分析し、来年度以降の取り組みにつなげていく。参画企業・団体が描くゴールは交通体系の新たなスタンダードだ。「自動運転サービスや小型モビリティを組み合わせた交通体系のモデルケースを目指す」(同部)方針だ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞1月21日掲載