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2021年1月19日

次世代電池世界市場、35年に2兆円規模 富士経済

富士経済(清口正夫社長、東京都中央区)は、電気自動車(EV)への採用が期待される全固体電池など次世代電池の世界市場を調査し、「2020次世代電池関連技術・市場の全貌」を昨年末に発表した。

リチウムイオン電池と比較して、全固体電池はEVの航続距離延長や安全性の向上に寄与するとして、2035年には19年比1106倍の2兆1014億円の市場規模になると予測した。

同社は20年7~10月、同社専門調査員による関連企業へのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用し、全固体電池4品目、非リチウム系二次電池7品目、新型リチウム二次電池8品目、次世代電池材料6品目の市場を調査・分析した。

全固体電池の20年世界市場は19年比178・9%の34億円と大幅な伸長を見込む。当面は酸化物系、高分子系が市場をけん引するが、将来的にはEV向けの需要を中心とした硫化物系の伸びが期待できるとする。

硫化物系は、参入電池メーカーが20年代前半の実用化に向けて研究・開発を進めており、現状はサンプル出荷が開始された段階。当面の採用は宇宙向けなどの特殊用途に限定されるとしている。

20年代前半には、大手自動車メーカーが硫化物系を搭載したEVを発売するとみており、25年頃から採用車種の増加を予想している。その後、中国の電池メーカーの参入などで市場が活発化し、30年頃から本格的な普及段階に入ると見る。

酸化物系は、タイプごとに異なるアプリケーションでの採用を目指して製品化が進められており、大型用途を想定するバルク型(全固体/疑似固体)と、小型用途で実用化が進む薄膜型/積層型に分けられる。

バルク型はEVをターゲットとして研究開発が進められているが、全固体電池の実用化は技術的なハードルが高いため、現時点では疑似固体電池が製品化されているという。

疑似固体電池は、全固体電池と比べると性能は劣るものの、現行のリチウムイオン電池と比べ安全性が高く、パック当たりの体積エネルギー密度向上、入出力特性の改善が進むなどの利点があるため、20年代前半にはEVへの搭載が予定されており、普及が進むとみる。

バルク型の全固体電池については、中国電池メーカーによる疑似固体電池からの技術進展や、欧米ベンチャー企業による研究開発により、30年代にEVに搭載可能な製品が実現すると予測する。

高分子系は、EVやEVバス、ESS(エネルギー貯蔵システム)向けの展開が一部でみられ、現状は欧州での需要が大部分だが、安全性が評価されており、EVやESSで採用が進むと予想する。

中国電池メーカーが製品化・量産化を進めており、容量をはじめとした性能面での課題が改善されることで、30年以降に市場が本格化する見込みだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞1月13日掲載