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2021年1月18日

日刊自連載「回顧2020」(2)中古車市場

2020年の中古車市場は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中古車オークション(AA)や小売りの現場を中心にデジタル化が加速した。

AA市場では、緊急事態宣言を受けてAA各社が来場を禁止する異例の措置を4月に取ったことで外部応札の利用増につながったほか、市場相場が高止まりしたことでインターネット上で在庫車両を融通し合う在庫共有市場が活性化した。

小売りは自粛明けから好調が続き、今後の顧客接点拡大に向けた施策としてオンライン商談ツールなどを導入する動きが目立つ。コロナ禍を経てニューノーマルを意識した取り組みが各社で始まっている。

4~6月にAA各社が感染症対策として来場を禁止したことで、バイヤーは外部応札システムを使用して競りに参加する必要があった。来場可能となった6月以降も外部落札比率は各社で前年比1割弱ほど増えた。

AA関係者からは「これまで外部応札に全く縁がなかった会員から利便性を認めてもらう大きなきっかけになった」との声が挙がる。各社で新規会員が増加傾向にあり、現在も外部落札件数は前年水準を上回って推移している。

外部応札システムの利用拡大に伴い、インターネットサービスの機能強化にも各社が力を入れた。

全国3会場でAAを運営するミライブ(伊藤文彦社長、埼玉県深谷市)は9月から、トヨタオートオークション(TAA)とシーエーエー(CAA)の会員向けにウェブサービスを提供するシグマネットワークス(永谷敏行社長、東京都中央区)は3月から、それぞれ外部応札サービスのスマートフォン版の提供を始めた。

荒井商事(荒井亮三社長、神奈川県平塚市)は、「アイネット」でAAや共有在庫を通した車両本体の取り引きから補修用部品の販売まで網羅できるサービスの実現に向けて動いている。

来年にも落札した車に必要な補修部品を同時注文できるようにし、将来的にはウェブ上で部品交換まで対応できるスキームを構築する。

AAでタマ不足が深刻化して各社で出品台数が前年を大きく下回ったことで、相場と成約率が高止まりする状況が6月から続いている。

小売りが好調な中でバックオーダーを抱えた小売り店が仕入れ先を選ばなくなったため、インターネットを介して店頭の小売り車両を取り引きする在庫共有システムの利用が盛んになった。

オークネットの「オークネオステーションハイパー」は6月の商談件数が同37%増となった。

JUコーポレーション(問谷功三社長、東京都新宿区)の「JUテントリ」の落札台数は6月が前年同月比56・4%増と最も高く、10月は同34・6%増、11月は同3・3%増と前年をやや上回るほどになった。現在は、相場が徐々に落ち着いてきたことなどから共有在庫の利用は縮小している。

小売り市場では、オンライン商談ツールの導入が進んだ。3月には東海地方でSUVの買い取り、販売を手がけるグッドスピードが導入を開始。

リクルートマーケティングパートナーズ(柏村美生社長、東京都品川区)の中古車情報サイト「カーセンサー」に掲載する一部の店舗や、ヤナセの認定中古車販売店「ブランドスクエア」などで導入が進んだ。

来店前のメールや電話による問い合わせをビデオ通話と置き換えることで、顧客と従業員の利便性の向上が見込めるほか、従来の来店型営業では接点がなかった見込み客の開拓にもつながると期待されている。

一方で、「コロナ禍においても顧客からのニーズと理解はほとんどないと見ており、様子見の段階だ」と、オンライン商談の有用性を疑問視する声も少なくない。

現時点では一部の事業者の活用にとどまるオンライン商談。ただ今後は、顧客ニーズの高まりや活用するスタッフのスキルが上達するにつれて、中古車販売のスタンダードになる可能性も秘めている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月24日掲載