2021年1月15日
日刊自連載「回顧2020」(1)新車市場
2019年10月の消費税増税によって新車市場が低迷する中でスタートした20年。春先に向けて回復への期待も高まる中、追い打ちを掛けるかのように新型コロナが襲い掛かってきた。2月下旬頃から一部の地域では新車ショールームへの客足が鈍り、受注活動に暗い影を落とし始める。
営業活動や新車供給が滞ったことで4月の新車販売台数は前年同月と比べて28・6%減と急速にしぼんだ。さらに5月は同44・9%減と東日本大震災の影響を受けた11年5月実績を下回り、この10年で最も少ない台数だった。
特に軽自動車は同52・7%減とすべての月を含めて過去最大のマイナス幅を記録。単月の台数としても現行規格になった1998年10月以降で最も少なかった。
それでも5月を底に徐々に回復への兆しをみせ、国による緊急事態宣言が解除された5月下旬からは受注台数も上向き始めた。新型車投入が相次いだトヨタ系ディーラーでは、2月発売の「ヤリス」を筆頭に、「ハリアー」「ヤリスクロス」などの受注を積み上げ、新車需要の底堅さを証明した。
4~9月の登録車ブランド別新車販売台数では、トヨタのシェアが50%を超えた。5月スタートの全店舗全車種販売(一部車種除く)などによって営業活動が活発化したことも功を奏した格好だ。
9月の登録車と軽自動車を合わせた車名別販売台数では、8月発売のヤリスクロスも加わったヤリスが登録車として3年1カ月ぶりの首位を獲得。10、11月と3カ月連続で首位を維持している。
11月の登録車ランキングでは、トヨタ車が1~7位を独占。日本自動車販売協会連合会が1968年に統計を開始以来始めてのことだった。
ここ数年堅調に推移してきた輸入車市場もコロナ禍のダメージが大きかった。4、5月と過去最大のマイナス幅となるなど、国内メーカー車以上の打撃を受けた。海外における都市封鎖(ロックダウン)などによって新車供給が一部で停滞したことも響いた。
こうした中、インポーターや輸入車ディーラーでは、販売現場におけるデジタル化に活路を見出そうといち早く動いた。アウディジャパン(フィリップ・ノアック社長、東京都品川区)は系列ディーラーに向けて既存のビデオ通話サービスなどを活用したオンライン商談の導入を提案。
早い販社では4月上旬から取り組みを始めた。ビー・エム・ダブリュー(BMWジャパン、クリスチャン・ヴィードマン社長、東京都千代田区)もユーザーがショールームに来店せずに車種選択から商談、納車まで進められる新たな販売スキームを構築し、5月から一部の系列ディーラーで展開している。
新型コロナ感染拡大の第3波が襲来したことで、年明けからの販売増に期待が掛かっていた新車市場も先行き不透明感がさらに増している。販売現場のデジタル化は国内メーカーや系列ディーラーでも目立ち始めており、こうした動きは今後もさらに活発化する見通しだ。
ウイルスへの対応という未曾有の事態に対応した今年の教訓を今後どのように生かしていけるのか。ニューノーマルの新車販売を模索する姿は続きそうだ。
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新型コロナウイルスの猛威が世界中を駆け巡った2020年。これまで当たり前だった日々の暮らしは「新たな生活様式」に置き換えられ、国内市場を主戦場とする企業も対応に追われた。新車、中古車、整備、用品、リサイクル業界の1年を振り返る。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞12月23日掲載