2021年1月14日
タイヤメーカー各社 〝つながるタイヤ〟実装へ、相次ぎ投入
装着したセンサーを通してタイヤの状態をモニタリングする〝つながるタイヤ〟の実装が、2021年から本格化する。ブリヂストンと住友ゴム工業が商用車向けに提供を開始するほか、トーヨータイヤも23年頃に実用化する。
タイヤの摩耗や空気圧、温度などを遠隔監視し、最適なメンテナンスサービスを提供するのが目的で、将来普及が見込まれる自動運転車への提供もにらむ。
タイヤ各社は、従来の売り切り型から販売後も利益を生み出し続けるソリューションサービスに舵を切りつつある。来年は、タイヤの新しいビジネスの可能性を占う年になりそうだ。
国内タイヤメーカーのセンサーを用いたタイヤの遠隔モニタリングサービスが、来年に実証から実装のフェーズに入る。
ブリヂストンは一部欧州などで展開している「タイヤマティクス」を12月から国内でも提供を始め、来年に拡販を進める。ホイールに装着した内圧警報装置で内圧を定期的に計測し、異常時は運行管理者に警報する仕組み。
住友ゴムも、群馬大学などと実証実験を重ねてきたTPMS(タイヤ空気圧監視システム)を用いたモニタリングシステムを来年中に事業化する方針だ。2社とも、まずはトラックやバス事業者を対象としたフリート向けのサービスを想定する。
国内勢では、トーヨータイヤがセンサーでグリップ力の現状と限界をリアルタイムで計測するセンシング技術の路面試験の段階に入っており、23年に実用化を見据える。横浜ゴムもアルプスアルパインと共同開発する乗用車用タイヤセンサーが、実装テスト段階に入りつつあるという。
数年以内に、大手4社のセンシングサービスが出そろうことになる。各社が新サービスの投入を急ぐ背景には、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)によってタイヤに求められる価値が変わってくることが大きい。
ドライバーレスの自動運転車では、タイヤのパンクや不調を遠隔地から監視する必要があるほか、マイカーからシェアリングに移行すれば、タイヤの販売本数の減少が予想される。
加えて、足元では安価なタイヤを販売する中国や韓国など新興勢の台頭で価格競争が起きており、4社の営業利益率はここ数年下降傾向にある。生き残るには、タイヤ販売に付加価値をつけた新しい業態への転換が急務になる。
各社が新たな収益の源泉と位置付けるソリューションサービスは、高い利益率を見込める可能性がある。生産工場など大きな投資が不要なこともあり、すでに一部地域で展開するブリヂストンは、ソリューションサービスの営業利益率が25%に到達した。
同社の石橋秀一代表執行役CEOは「販売が減れば利益が落ちるのが基本だが、デジタルで価値を提供するソリューションはレジリエント(強靭)なビジネスモデルと言える」と期待を込める。
ソリューションサービスは、稼働を止めないことを最優先とする商用車や、管理負担が大きいレンタカー、シェアカーなどがまずはターゲットになる。新しいタイヤの在り方として受け入れられるかどうか、まずは今年が市場の感触を探る1年になる。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞12月26日掲載