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2021年1月13日

日刊自連載「回顧2020 自動車業界この一年」(4)環境激変、部品メーカー

新型コロナウイルスの感染拡大は、自動車のサプライチェーン(供給網)のすそ野の広さを改めて実感させた。完成車メーカーの相次ぐ生産停止で、部品メーカーをはじめ鉄鋼や化学など素材メーカーも大打撃を受けた。

急激な販売減と先行きの不透明さにオペレーションが追い付かなかったのが実情だ。ただ、夏頃には想定よりも早い回復が始まり、感染症対策も継続しながら供給を止めない取り組みを進めている。

日本自動車部品工業会(尾堂真一会長)がまとめた上場66社の2020年4~9月期の経営動向は、全体で売上高が前年同期比25・5%減少し、営業損益は5千億円強の黒字から約2千億円の赤字に転落している。

20年は自動車業界を取り巻く環境に変化があった。コロナ禍の行動制限や環境対応の強化で内燃機関車の新車販売を規制する動きが増加し、自動運転や電動化の技術開発が加速している。

自動運転では国内法規の整備も進み、「レベル3」(条件付自動運転)の公道走行も可能になった。部品メーカーもうこうした動きに乗り遅れないようにコロナ禍でも取捨選択しながら開発の手は緩めていない。

研究開発部門では高性能パソコンの支給やセキュリティーを構築した上で自宅でも作業できるようにしたり、試験受託サービスではオンラインを活用した立ち会いを導入するなどしてコロナ禍に対応した体制を整えた。

生産拠点の国内回帰や海外拠点の分散化によるBCP(事業継続計画)の見直しも進む。ジャパンディスプレイは車載用ディスプレーの海外工場での組み立てを国内に切り替える検討しているほか、古河ASは21年夏に操業するベトナムのワイヤーハーネスの組立工場に他工場の操業停止のような緊急時に備えて生産ラインを構築できるスペースを設ける。

日本精工も22年にも新設予定の車載モーターなどに使うベアリングの工場で新たな国への設置を検討する。ポストコロナに備えた生産体制の構築も合わせて進んでいる。

CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)など自動車業界の変革に対応し、世界の競合と伍するための業界再編も続いた。自動車シートのテイ・エス テックが株式公開買い付け(TOB)と第三者割当増資の引き受けでシートの機構部品などを手がける今仙電機製作所と資本業務提携。

1月には日立製作所・ホンダ傘下の部品メーカーが統合し、メガサプライヤーを志向した新会社が立ち上がった。来年以降はコロナ禍の体力低下が呼び水となってM&A(買収・合併)も活発になりそうだ。

足元の業績動向は、新型コロナが一時的に収束へ向かった夏頃からは自動車生産台数が持ち直しており、通期では黒字転換や赤字幅が縮小するとみられる。ただ、「自動車メーカーなどが在庫を積み増す動きが年内で一服する」との声もあり、年明けの感染状況や需要の戻りが部品業界のポイントになりそうだ。

また、中期的には自動車メーカーの新車投入計画の後ろ倒しによる計画修正も迫られており、今後数年はまだまだ厳しい状況が続くと考えられる。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月25日掲載