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2021年1月8日

日刊自連載「回顧2020 自動車業界この一年」(3)激動の自動車行政

今年は行政にとって後世に残る一年となるのは間違いない。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今春には「緊急事態宣言」を発出。世界的に人流が途絶える中で、自動車を含め多くの産業で需要が蒸発する事態に直面した。政府は感染防止と打撃を受けた事業者への支援を加速させ、日本経済の再生に尽力してきた。

菅義偉首相による新政権も発足し、コロナ後の経済成長を後押しするため、グリーン化やデジタル化への構造転換も急ぐ。一方、足元では再び感染症が猛威を振るっており、日本がコロナ禍のトンネルから抜け出すにはまだ時間がかかりそうだ。

新型コロナは行政の政策立案の前提を大きく変えた。世界で人やモノの流れが阻害され、自動車も一時、世界同時多発的に需要がなくなった。

リーマンショックや東日本大震災の時さえも上回るスピードで景気が落ち込み、言わば〝アベノミクス効果〟で続いていた日本の景気拡大は戦後最長の「いざなみ景気」にあと2カ月届かず、71カ月で幕を閉じた。

また、健康問題によって安倍晋三前首相が憲政史上最長の政権運営を終えるなど、大きな節目を迎えた年にもなった。

菅新政権は「国民のために働く内閣」を自称し、コロナ禍で浮き彫りとなった日本の弱点克服を加速させている。その一つが「グリーン成長戦略」で、環境対策を新たな日本の成長エンジンとして育成していく方針。

政府は2050年に温室効果ガスを実質ゼロ化する新たな国際公約を掲げ、退路を断つ。水素社会の実現や電動化技術などで革新的なイノベーション創造を後押しすることで、世界をリードしていく方針。

脱炭素化には運輸部門の貢献も欠かせない。政府は中期的に内燃機関への規制をかけていく方針とみられ、自動車産業の構造改革も想定よりスピードアップする必要性がありそうだ。

日本が遅れをとっているデジタル化も巻き返しを期す。菅政権発足直後から「デジタル庁」設立に向けた動きが本格化。自動車関連でも運転免許証のマイナンバーカードとの一体化をはじめ、さまざまな行政手続きを電子化する方向で調整が進んでいる。

21年度予算にも自動車保有関係手続きのワンストップサービス(OSS)と、マイナンバーカードの連携強化を進める事業が盛り込まれた。新型コロナをきっかけに、遅々として進まなかった日本の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の実現に弾みをつけていく考えだ。

また、新型コロナはコスト競争力の高さに定評があった日本のサプライチェーンにも課題を突きつけた。新型コロナの世界同時流行で供給網が寸断され、日本のものづくりにも大きな影響を受けた。

このため、強靭なサプライチェーンの構築を目指し、生産拠点の国内回帰を含む多元化支援を拡充するなど、次代に向けた土台づくりも急ぐ。

しかし、日本はコロナ禍で世界が内向き志向に流れる中でも、自由貿易が経済成長には欠かせないと訴え続けた。こうした姿勢を裏付けるように東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定への署名にも貢献。

英国の欧州連合(EU)離脱を受けた日英間の経済連携協定(EPA)もスピード合意に至るなど、通商面で成果を上げている。日本は、環太平洋経済連携協定(TPP)の来年の議長国でもあり、さらなる自由貿易の推進に向けた手腕も期待されている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月24日掲載