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2021年1月7日

日刊自連載「回顧2020 自動車業界この一年」(2)加速する電動化

2020年は、車両の電動化を巡る動きが一段と加速した一年となった。トヨタ自動車や日産自動車、ホンダ、マツダが量産型の新型電気自動車(EV)を発表したほか、三菱自動車がプラグインハイブリッド車(PHV)を追加するなど、各社が示す電動車の販売計画に沿ってラインアップの拡充を進める。

政府が30年までの電動車普及目標を見直す動きも出ているが、地域に合った最適な電動車の提案やライフサイクル全体での二酸化炭素(CO2)の排出削減が重要になる。

自動車メーカー各社は、環境規制の厳格化をにらみ、相次ぎEVやPHVの投入に乗り出した。ホンダは、21年から本格化する欧州の環境規制への対応を念頭に、同社初の量産型EV「ホンダe」を欧州で先行発売し、10月末からは日本でも売り出した。

社内で「CAFEファイター」と位置付ける新型「フィット」などハイブリッド車(HV)と合わせて各地域の環境規制を乗り切る戦略を取る。トヨタはレクサスブランドのEVで第1弾となる「UX300e」を日本で限定発売する。

マツダはSUVタイプの新型EV「MX―30」を9月に欧州で発売したのに続き、21年1月には日本市場にEVモデルを投入する。日産は新型のクロスオーバータイプのEV「アリア」を21年中に日本で販売する計画で、23年度までに日本の電動化率60%の達成に向け弾みをつける。

また、三菱自は12月に「エクリプスクロス」にPHV仕様を追加して発売するなど、EVだけでなく、ユーザーの好みや用途などに応じて多様な電動車の製品群を用意する。

20年度上期(4~9月)の登録車と軽自動車を合わせた乗用車販売に占めるEVやHV、マイルドHVなどの電動車の販売比率は37・0%で推移している。

ただ、グリーン化を政策の柱に据える菅政権の誕生で、50年のカーボンニュートラルの実現に向けた議論が加速。政府では、30年までの次世代自動車の普及目標を前倒しする案が浮上しており、自動車メーカーも対応を迫られる可能性がある。

各社が掲げる電動車販売計画のうち、三菱自が10月に公表した長期的な環境戦略「新環境計画パッケージ」では、30年に世界販売に占める電動車比率を現状の7%から50%に引き上げる計画を示す。

世界的な脱炭素化の流れを受け、加藤隆雄代表執行役CEOは「決まっていることは変えられないが、よりEVに振っていかないといけない」として、想定する電動車の販売構成を微調整する必要性があることを示唆した。

車の低燃費化だけでなく、原材料の採取から車両製造時、電力発電時、廃棄に至るライフサイクル全体を通じて環境負荷を下げる取り組みが重要になる。

日本自動車工業会の豊田章男会長が「国家のエネルギー政策の大変革なしには(カーボンニュートラルは)難しい」と指摘するように、車両の電動化推進と並行して、動力源の脱炭素化も欠かせない。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月23日掲載