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2021年1月6日

日刊自連載「回顧2020 自動車業界この一年」(1)コロナ禍で大揺れ

2020年の自動車業界は、新型コロナウイルスの世界的な蔓延というこれまで経験したことがない危機に直面した。感染を封じ込めるためのロックダウン(都市封鎖)や外出自粛などにより、サプライチェーンに生じた亀裂が拡大。

4月には乗用車メーカー8社の国内工場が稼働停止を余儀なくされた。移動規制の強化で新車販売も大きな打撃を受けた。

感染拡大から約1年を迎える現在も依然として収束の見通しが立たない中、自動車業界では、コロナ禍の長期化を見据えた新常態(ニューノーマル)を模索する動きが加速している。

19年12月に中国湖北省武漢市で新型コロナに起因する肺炎を発症するケースが報告されて以降、感染者は世界各地へと広がった。武漢をはじめ各国政府による都市封鎖や移動制限措置などにより、部品調達が滞ったことで完成車生産にも影響が波及。

乗用車メーカー8社の4月の世界生産は前年同月比60・9%減、5月は同61・8%減と大幅な落ち込みを経験した。

移動規制の強化は販売面にも深刻な影響を与えた。日本は、4月に政府が緊急事態宣言を発令し、翌月の全面解除まで全都道府県で人の流れが大きく停滞。5月の国内新車販売台数は前年同期比で44・9%減少し、東日本大震災直後以来の低水準を記録した。

4~6月期に激減したグローバルの新車需要は、中国や北米を中心とした堅調な需要に支えられ、7~9月期は回復傾向を示した。21年3月期の業績見通しは、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなど上場自動車メーカー9社中6社が売上高と営業利益を上方修正した。

コロナ禍が幅広い産業の業績を押し下げる中、自動車業界はいち早く回復基調に入ったことを示した。

都市封鎖措置によりサプライチェーン寸断の長期化への懸念が生じた。これに対しては、各社が東日本大震災以降、注力してきたBCP(事業継続計画)対策の強化に向けた取り組みが奏功した。

スズキは取引先との情報共有システムを活用し、国内の生産活動の安定化につなげ、スバルは予防と早期復旧をBCP対応の柱に据え、有事の際に迅速に仕入れ先のもとに駆け付ける支援チームを立ち上げるなど、初動対応を早める取り組みを進める。

コロナ禍で医療体制がひっ迫する中、自動車産業一丸となった支援活動にも乗り出した。日本自動車工業会(豊田章男会長)や日本自動車部品工業会(尾堂真一会長)など自動車関連4団体は、ものづくり力を応用したフェイスシールドや移動車両といった物資の生産・提供からワクチン開発サポートなどの幅広い支援を表明した。

加えて、自工会は6月に日本の製造業に携わる人材を死守するため、資金繰りが厳しい企業を支援する枠組みも立ち上げた。

新型コロナは現在も猛威を振るい、収束の見通しは立っていない。一方、コロナ禍を機に従来の働き方を大幅に見直す制度づくりが加速している。トヨタは在宅勤務制度を拡充し、対象を若手を含めた全事技職(事務系・技術系社員)・業務職と一部の技能職にも広げる方向で動き、ホンダは社内制度を改定してより多くの社員の在宅勤務を認めている。

日産も在宅勤務制度の上限時間や対象者などを見直す方向で検討を進める。また、感染拡大防止と経済活動の両立に向け、自動車生産・販売面で「ウィズコロナ・ポストコロナ」時代を見据えた試みが続く。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月22日掲載