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2020年12月23日

ホンダ パワープロダクツ事業、電動化対応待ったなし

汎用エンジンや芝刈り機、除雪機といった「パワープロダクツ」の世界市場で約2割のシェアを握るホンダ。競争力の源泉は、自社製品への搭載に加え、建機メーカーなど世界約1千社にOEM(相手先ブランドによる生産)供給するエンジンだ。

ただ、世界的な環境意識の高まりでパワープロダクツ製品の市場にも電動化の波が押し寄せつつある。価格競争力の高い中国製品との戦いにいかに打ち勝つか。鍵になるのは、四輪・二輪車事業と連携した「オールホンダ」の総合力だ。

ホンダのパワープロダクツ製品の歴史は、小型農機メーカーからの依頼で開発した汎用エンジンを発売した1953年に始まった。83年には建機メーカーや作業機械メーカー向けに汎用エンジンのOEMも開始。

コア技術であるエンジンの性能や耐久力を強みに、生産台数は増加の一途をたどり、2019年には累計生産が1億5千万台を超えた。

そのホンダが足元で直面している課題が電動化へのシフトだ。これまでエンジンが主流だったパワープロダクツ製品だが、欧州を中心に「高齢の方や若い顧客がガソリンに触れたくない」(加藤稔ライフクリエーション事業本部長)という電動機のニーズが拡大。静音性を求める要望も強い。

パワープロダクツ製品の販売台数の約7割を占めるOEMでも「バッテリーやモーターといった電動ユニットを中国から買ってくればホンダのエンジンは必要ないと言われる可能性がある」(同)という。

もちろん、ホンダも商品投入を進めており、欧州では12年に自動で動く電動芝刈り機「ミーモ」を投入し、19年には電動ブロワーなどラインアップを拡充した。汎用エンジンの代替製品となる電動パワーユニット「eGX」のプロトタイプも開発し、商品化への道を探る。

組織も見直し、19年4月、パワープロダクツ事業とエネルギー事業を統合したライフクリエーション事業本部を発足した。

ただ、コスト要求も厳しいパワープロダクツ製品で電動化を進めるのは簡単ではない。特にハードルが高いのは、四輪車、二輪車と同様にバッテリーの問題といえる。

ライフクリエーション事業本部でパワープロダクツ製品への適用の検討を進めるのが、電動二輪車の交換式バッテリーとして使用する「モバイルパワーパック」だ。

モバイルパワーパックの適用範囲を広げられれば、交換式バッテリーの課題であるインフラコスト低減とともに、パワープロダクツ製品の電動化を進めることができる。

二輪車以外への適用はすでに実証実験を進めており、今年9月にトヨタ自動車と共同で提供を開始した移動式発電・給電システム「ムービングe」では、ホンダがモバイルパワーパックを家電などに使用できるようにシステム化した「チャージアンドサプライコンセプト」を開発。ガソリンやカセットボンベで動く従来の発電機の代替品として活用する。

ホンダは、30年に向けた長期ビジョンとして「すべての人に『生活の可能性が広がる喜び』を提供する」ことを目標に掲げる。

実現のためには、モビリティの開発に加え、エネルギー事業を含めたパワープロダクツ製品の進化も不可欠だ。ライフクリエーション、四輪車、二輪車、三位一体でのビジョン実現を目指す。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月11日掲載