2020年12月17日
インフラとの協調、「レベル4」以上で必須 産学が各地で実験
インフラと協調することで「レベル4」(高度な自動化)以上の自動運転車を走行させる実証実験が各地で行われている。信号機や路面に敷設した磁気センサーと連携させることで、車載センサーだけに頼らない冗長性を高めた自動化を図る。
高価なLiDAR(ライダー)などを使用せずに自律走行する車両もあり、投資規模が限られる過疎地での自動運転化で期待される。
同志社大学モビリティ研究センターの佐藤健哉氏が「どんなセンサーでも死角は必ず生まれる。通信で得た情報を利用するべき」と説くように、安全性を担保する上でもインフラとの協調が果たす役割は大きい。
ライダーと高精度地図を駆使した自律型自動運転開発では、グーグル系のウェイモなどが先行する。ウェイモは10月から米国で無人自動運転車を使ったタクシー配車サービスを一般向けに拡大し、実装段階までこぎつけた。
一方、自律型では高価なライダーの搭載が必要と言われており、コスト面が課題になっている。加えて、建物や他車に隠れている歩行者など、常時変化する外的情報を取得するには、車載センサーだけでは難しいのが現状だ。
そこで注目されているのが、車とインフラとの協調だ。同志社大の佐藤氏は、自動運転の発展形態をフェーズ0~6の7段階に分類した区別方法を提案しており、そのうち、0以外の6フェーズはすべて通信を用いる必要があるとしている。
1~2までがリアルタイムの情報を走行に生かすもので、3以上からインフラや他車と通信して未来を予測して走行するフェーズに入る。
内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」でも、信号機などのインフラと協調することで走行データの収集を進めている。
ヴァレオは、SIPの実証実験でレベル4相当の自動運転デモカー「Drive(ドライブ)4U」を日本初導入した。
次期型を含むライダー7台などのセンサー群に加えて、GNSS(全球測位衛星システム)による自車位置測定技術とSIPで提供されている高精度3Dマップを組み合わせた。信号機などのインフラと協調することで、交差点での進行や停止の決定精度を向上させた。
埼玉工業大学もSIPで、公共車両優先システム(PTPS)などを活用した自動運転バスの実証実験を行った。搭載した車載機を用いて、信号に差し掛かった時に「青遅延」や停車時に「赤短縮」といった優先的な信号制御を行う仕組みの有効性を検証した。
アクセルなどの自動制御に加え、バスなどの公共交通の場合はインフラと協調することで定時性の向上も図れる。
みちのりホールディングスや小糸製作所などが茨城県日立市内で行っている中型自動運転バスによる実証実験では、見通しの悪い交差点にライダーなどを設置し、車載センサーでは検知できない死角の車両や歩行者を検知、識別して安全性を担保している。
「レベル4以上ではインフラとの通信は必須になってくる」(小糸)とし、収集したデータを、センサー機能を搭載したスマート信号機など今後必要性が増す次世代製品の開発に生かす考えだ。
愛知製鋼は金属の結晶構造を崩した「アモルファスワイヤ」を応用した磁気センサーを開発。愛知県内で小型自動運転バスの実証事業を行っている。
GPS(全地球測位システム)を受信しにくい場所でも安定して走れるようにした。コスト面でも優位性は高く、過疎地でのラストワンマイルなどでの活用も期待できそうだ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞12月9日掲載