トヨタ自動車と本田技術研究所は、福島県いわき市で移動式発電・給電システム「Moving e(ムービングイー)」のイベント会場での実証実験を全国で初めて実施した。

ネッツトヨタ郡山の小室和人社長が、ムービングイーをいわき市に誘致したことがきっかけで、いわき市の市民参加型スポーツイベント「いわきドリームチャレンジ2020」の会場で実験を行った。トヨタの燃料電池(FC)バスを電源に、ホンダの可搬型外部給電機と可搬型バッテリーを用いて、会場内に必要な電力を供給した。

ムービングイーは、2020年8月にトヨタと本田技研が、災害時だけでなく平常時のイベントなどでも電力供給を行うシステムとして実証実験を開始すると発表した。これを受けて小室社長は、いわき市の清水敏男市長にムービングイーを説明し、実証実験の快諾を得た。

いわき市は、20年4月からトヨタのFCバス「SORA(ソラ)」が運行を開始。燃料電池車(FCV)は、市内で55台が登録されるなど、水素エネルギーに対する理解が高いことも、全国初のイベント会場での実験が実現につながった。

移動式発電・給電システムを通じて、会場内のイベントステージや飲食ブースなどに電力を提供した。

飲食ブースには、充電・給電機の「モバイルパワーパック」を提供し、バッテリー容量が少なくなるタイミングで、トヨタとホンダの担当者が各ブースでモバイルパワーパックのバッテリー交換を行う。

ガソリン式の発電機と違い、騒音や排出ガスがゼロなことや、万が一の事故の心配がないことから、関係者からは好意的な意見が寄せられた。

また、バスの車内を公開しており、子どもたちの人気を集めていた。さらに、イベントステージでは、トヨタとホンダの担当者がムービングイーについて説明。

「水素は安全かつクリーンなエネルギー」なことや「トヨタのFCバスは大容量大出力の発電所で、電力の供給をホンダが担当している」とムービングイーを分かりやすく市民に解説した。

今回の実証実験を通じて、トヨタの担当者は「バッテリーパックの交換や給電体制の改善につなげたい」と話していた。