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2020年11月20日

政府、RCEP署名 部品関税撤廃へ、完成車輸出でも成果

政府は15日、日本を含む15カ国間で東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定に署名した。発効すれば、世界の国内総生産(GDP)や貿易総額、人口の約3割を占める巨大な経済圏が誕生する。日本にとっては中国と韓国と結ぶ初めての経済連携協定(EPA)にもなる。

10年超の時間はかかるが、自動車部品などの関税を段階的に引き下げ、撤廃していく方針。日本からの部品輸出などにメリットが出るとみられ、国内の自動車産業の活性化が期待できる。

日本は今回参加を見送ったインドの復帰を引き続き働きかけていく考えで、アジアにおける自由貿易の促進につなげる狙いだ。

今回の合意によって、RCEP参加国全体で日本から輸出する場合の関税撤廃率は品目数ベースで91・5%に上る。特に初めてEPAを結ぶことになる中国と韓国向けは、工業製品の対日無税品目の割合がそれぞれ8%から86%、19%から92%と大幅に高まることになる。

自動車部品では中国向けで約87%、韓国向けは約78%の品目について段階的な関税撤廃が決まっており、日本の自動車産業にとっても大きな成果を得たとみられる。

しかし、日本企業が多くのメリットを享受するには、しばらく時間がかかる。日中間ではエンジンポンプの一部、日韓間はゴム製タイヤの一部で関税の即時撤廃に合意したものの、これ以外では10年超かけて撤廃に至る品目が目立つ。

例えば中国とは電気自動車(EV)用のリチウムイオン蓄電池の電極・素材の一部が16年目、EV用モーターの一部も16年目ならびに21年目に撤廃する見通し。韓国とも電子系部品やエアバッグおよびその部品で、10年目ならびに15年目に撤廃することとなっている。

自国の自動車産業の競争力を左右するような高度な部品は関税撤廃まで長引く傾向にあり、当面の競争環境には大きな変わりがなさそうだ。

日本からの完成車輸出でも一定の成果が上がった。日中間では乗用車の一部で中国が自主的に25%から15%に引き下げている税率を協定に盛り込んだ。これにより、事実上、税率アップを防ぐ。

また、ラオスやミャンマーなど既存のEPAで完成車が除外されている国に対しても、段階的な撤廃で合意するなどハイレベルな結果を引き出した格好だ。

RCEPに署名した15カ国は今後、協定発効に向けた国内手続きを開始する見通し。日本も国会承認などを急ぎ、早期の発効に向けた環境整備に取り組む考え。

また、RCEP参加国はインドが即時に再交渉に臨めることでも合意しており、引き続き、より大型の経済圏構築に向け力を尽くしていく考えだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞11月17日掲載