2020年11月17日
自動車メーカー 「ダイナミックプライシング」導入の動き拡大
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の充電料金を電力卸価格に応じて変動させるダイナミックプライシングの実用化に向けた試みが広がっている。
日産自動車はENEOS(エネオス)とともに九州の一部地区で実証事業を開始し、三菱自動車は三菱商事とローソンが共同出資するMCリテールエナジーと10月に実証を開始した。電動車の普及を見据え、充電時間を分散化する仕組みの構築につなげる。
ダイナミックプライシングは、需要に応じて料金を柔軟に変動させる仕組み。飛行機やホテルで浸透しているほか、自動車業界ではライドシェアやレンタカーの領域で活用が進む。
EVやPHVの充電時間の集中による電力系統の負荷増大が懸念される中、経済産業省の資源エネルギー庁は2020年度に充電時間の分散化に向けたダイナミックプライシングの実証事業を開始。日産や三菱自はここに参画する形でそれぞれ実証事業を開始した。
電力小売り事業者は、卸電力価格が変動しても一律で顧客に販売するケースが多いが、ダイナミックプライシングの実証事業では卸価格の変動を小売り料金に反映させる。
料金に反映する仕組みは実証事業によってさまざまだ。例えば、日産とエネオスの場合、午前10時~午後2時(7~9月を除く)の間に、1㌔㍗当たり12円を割り引くプランを実証事業の参加ユーザーに適用する。
一方、三菱自とMCリテールエナジーの場合は、1日ごとに卸市場価格が最も安い時間帯の4時間を電動車の充電無料時間とする。その日の無料時間は参加者に前日にメールで通知して知らせる。
自動車メーカー以外で独自の技術を活用してEVの充電にダイナミックプライシングの活用を進める動きもある。
福岡県のスタートアップ企業であるアークエルテクノロジーズ(宮脇良二社長、福岡市中央区)は、人工知能(AI)を活用し、充電に最適なタイミングをラインなどで利用者に通知する。
車両と自宅に設置した端末をもとに運転特性や充電特性などの情報を収集するとともに、天候や季節、曜日、原子力発電の稼働状況から数日後の卸価格を予測し、適切な充電タイミングを伝える。
宮脇社長は「実証実験の結果、電気料金が安い時間帯に充電をシフトさせられればエネルギーの有効活用に向けた効果は大きい」と実証実験の結果に期待する。
政府は30年までに新車販売に占めるEVとPHVの比率を20~30%にまで引き上げる目標を掲げる。電動車の普及に向けては電力系統の安定化も課題となる。自動車メーカー2社は、ダイナミックプライシングの適用に向けた準備を進めて電動車の普及を図る考えだ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞11月13日掲載