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2020年11月17日

日刊自連載「インパクト 今後の自動車産業PART2」(3)乗り方が変わる

新車の売り切りからリースやシェアリング(共同利用)、サブスクリプション(定額利用)へと多様化する「乗り方」。多彩な移動手段をシームレスにつなぐMaaS(サービスとしてのモビリティ)も含め、非接触型社会の行動変容が乗り方に影響を及ぼしそうだ。

新型コロナウイルスの影響による渡航や外出の制限で航空機や鉄道の需要は激減した。しかし、プライベート空間が確保できる自家用車はその価値が改めて見直された。

トヨタ自動車子会社のデルフィス(土橋代幸社長、東京都千代田区)がゴールデンウイークに実施した調査(回答1600人)によると、コロナ禍を機に車を購入したくなった人の割合が、購入を中止もしくは延期した人の割合を上回ったほか、東京都など一部地域では自動車による移動が増えた。

夏の追跡調査では「購入したくなった」と答えた人の12%が「実際に購入した」と回答した。

新車市場は2桁減が続くが、中古車小売りは6月に前年実績を上回った。現車を即納でき、新車より安い価格で購入できる強みが改めて見直された。トヨタ系販社が低価格帯を中心にオンライン販売を始めるなどの動きもある。

ホンダは、1月に埼玉県和光市の中古車店舗で始めた定額利用サービス「マンスリーオーナー」の取り扱いを9月から全国に広げた。このサービスは利用期間が1年未満と短いのが特徴だ。日本本部営業企画部の井上喜章主任は「利用者からは『コロナ対策で公共交通機関からクルマに切り替える』という声も上がっている」と話す。

トヨタ系のサブスクサービスを手がけるKINTO(キント)の本條聡副社長も「コロナで着実に自家用車のニーズは増えている。われわれの商品はエントリーのところ(敷居)を下げているので、初めてクルマを買うお客さまの心に刺さっているのでは」と期待する。

一方、コロナ禍で苦境に陥った自家用以外の移動サービスの回復ぶりはまだら模様だ。日本でも宅配サービスが急増するライドシェア大手、米ウーバーの4~6月期決算は、主力の移動サービス事業の売上高が前年同期から7割近くも減った。同業の米リフトも業績悪化により筆頭株主の楽天が経営から手を引く。

ライドシェアと同じ不特定多数が相手だが、見知らぬ人とは同乗しないカーシェアリングはどうか。交通エコロジー・モビリティ財団によると、今年3月時点の会員数は約204万人(前年比25・8%増)、車両数は4万290台(同15・2%増)だ。

最大手のパーク24では5月を底にカーシェアの売り上げが回復。9月の会員数も148万4千人と前月より2万4千人増えた。

一方で同社のレンタカー事業はインバウンドや遠距離旅行需要が戻らず「保有台数の調整後も引き続き厳しい水準」(同社)という。カーシェアやレンタルは利幅がもともと薄く、海外ではゼネラル・モーターズ(GM)がカーシェア事業から撤退する。

「誰が乗ったか分からないクルマを使いたくない」という新たな利用者心理を含め、これまで右肩上がりだった市場の先行きは見通しにくい。

コロナ禍で一番、存在感が増したのは自転車だ。デロイトトーマツコンサルティング(佐瀬真人社長、東京都千代田区)の「ポストコロナの移動に関する意向調査」(回答約3千人)によると、〝3密〟が生まれやすい電車の利用意向が大きく減る一方、代替手段として東京23区や名古屋、大阪では「自転車・徒歩」の増加が見込まれる結果に。

電動キックボードや折りたたみ電動バイクなどを含めたパーソナルモビリティへの関心が世界中で高まる。変わる乗り方に合わせ、MaaSの輪の中でクルマも技術やサービスを磨いていく必要がある。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞10月28日掲載