2020年11月16日
日刊自連載「インパクト 今後の自動車産業PART2」(2)営業が変わる
新型コロナウイルスの感染拡大はビジネスコミュニケーションを一変させた。取引の打ち合わせから新製品の提案、展示会、夜の懇親会や接待までが自粛に追い込まれ、一部はネット空間に置き換わりつつある。
とは言え自動車産業を取り巻く厳しさは変わらない。提案力や営業力をどう維持し、高めていくか。新たな競争が始まった。
業界でオンラインを活用する契機になったのが国内最大の自動車技術展示会「人とクルマのテクノロジー展(人テク展)」の中止だ。
人テク展に合わせて最新技術や新製品を紹介する素材メーカーやサプライヤーが多いだけに、サプライチェーン(供給網)の川下にあたるメーカーほど中止の影響が大きく、戸惑いが広がった。
素早い対応を見せたのが化学素材メーカーのクラレだ。5月には人テク展に代わるオンライン展示会を行うと発表。出展予定だった新製品を含む自動車関連素材をウェブ上で紹介した。
同社は「初めての試みで手探り感はあったが、想定以上のコンタクトや問い合わせ数で、資料のダウンロードも多かった」と話す。
オンライン展示会を開催したのは、まさに多くの企業で在宅勤務が広がり、対面で情報を得るという選択肢がなくなった時期。
「どんなものなのかと見てくれた方も含めて総評としては良かった。ファーストコンタクトとしての有効性は感じたが、あとはいかにビジネスにつなげるかが課題だ」(同社)。
「リモート商談はありがたい」と話すのは、豊田合成で細菌やウイルスを除去する「深紫外LED」を売り込む営業担当者だ。日帰りの東京出張で訪問できる企業はせいぜい3社だがリモートなら5社をこなせる。
リモート商談で脈がありそうな企業に絞って訪問することで営業効率が上がるだけでなく「リモートなら営業の後輩を同席させられOJT(職場内教育)にも役立つ。リモートのメリットは多い」と前向きだ。
一方、21~23日にポートメッセなごや(名古屋市港区)で開催された「名古屋オートモーティブワールド」。自動車産業の最新技術が一堂に会したこの展示会には初日から多くの来場者が詰めかけた。
リアルな展示会としては数カ月ぶりの開催。コロナ禍で失われたビジネスコミュニケーションを取り戻そうと会場は熱気に包まれた。もちろん、参加者全員がマスクを着用し、手指の消毒を徹底、サーモグラフィーによる体温測定も含め、感染防止策に万全を期した上での運営だ。
「実際に行う展示会はお客さまにとって理解を深める重要な場になる」。沖エンジニアリング(OEG)の橋本雅明社長はリアル展示会のメリットをこう強調する。
ただ一方で「今はウェブでの打ち合わせが増えている。本当に細かいところは対面で確認してもらうのが良いだろうが、データに基づく打ち合わせや確認などはオンラインで対応できる領域がある」という。
会場では来場者と社員の安全を優先し、出展を取り止めたブースも少なからず目立ったが、代わりに独自のオンライン展示会に誘導する新たな試みも見られた。
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ウィズコロナ、アフターコロナ時代のビジネスコミュニケーション。それは「リアルとネットを組み合わせたハイブリッド。今後は両方やることを当たり前にしていかなければならない」とOEGの橋本社長。時空間を超えるネットと〝五感〟を駆使するリアルの最適解を探ることになる。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞10月27日掲載