2020年11月16日
マツダやスバル、技術開発で地域連携 電動化や自動運転見据え
自動車メーカーが地域の研究・教育機関や企業との連携を深めている。マツダなどで構成する「ひろしま自動車産学官連携推進会議」(ひろ自連)は参加団体数が33団体にまで拡大。従来の内燃機関などの取り組みに加え、電気自動車(EV)の研究に向けた準備も始めた。
スバルは群馬大学と2030年以降に向けた自動車の新技術を研究する「次世代自動車技術研究講座」を今年4月に発足した。地域の団体や企業との共同研究で地域の力を育むことは結果的に自動車メーカーの競争力の向上につながる。
電動化や自動運転を見据え、連携を強化するとともに、より幅広い業種を巻き込んでいく考えだ。
「世界を驚かせる技術を絶えず生み出し、人材が集まる世界最高の研究開発の場を広島に整えたい」(前田剛享ひろ自連運営企画委員会委員長)。こうした思いからひろ自連が立ち上がったのは15年。産官学で連携し、全て人が豊かに生活できる「地産地活の居住空間」の実現を目指す。
産学連携が遅れているといわれる日本だが、ひろ自連では発足から5年ですでに多くの成果が出ている。代表例がマツダが19年に投入した「スカイアクティブX」で実用化した世界初の技術「SPCCI」(火花点火制御圧縮着火)だ。
マツダは、ひろ自連の枠組みの中で広島大学と基礎実験から燃料噴霧の現象を解明し、シミュレーション技術を駆使して最適な燃焼方法を導いた。圧縮着火を世界で初めて実用化できたのはこうした産学連携の基礎研究があったからこそといえる。
内燃機関を研究する部会ではエンジン全体のモデル化に向けた研究をサプライヤーとも連携して進めており、今後は排気系や触媒反応の現象解明を進める。
広島の主力サプライヤーであるヒロテックとは排気気流音のモデル化に取り組んでおり、次世代車への適用を目指す。このほか、直近では電気自動車(EV)社会に向けた準備も開始した。21社のサプライヤーが参画する地域企業活性化委員会でEVに必要となる技術の教育を進める考えだ。
地の利を生かした共同研究はマツダ以外でも進めている。スバルは群馬大と、「安全」「感性」「設計プロセス改革」の領域で、スバルのニーズや課題を洗い出し、群馬大が理工系や情報系、医学系の知見をもとに解決策を探る取り組みを開始した。
藤貫哲郎執行役員最高技術責任者(CTO)は「技術イノベーションをさらに加速するには包括的な枠組みで両者ががっちりとタッグを組んで進めることが非常に有効だ」と群馬大との連携を深める狙いを明かす。
スズキやヤマハ発動機も中小企業の技術力向上などに取り組む「次世代自動車センター浜松」の活動を支援する。
自動車メーカー1社で技術や社会の急速な進化に対応することは難しい。地元の企業や団体との連携を強化し、競争力の向上を図る。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞11月12日掲載