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自動車産業インフォメーション

2020年11月4日

成長続くドライブレコーダー市場 高い安全意識を背景に

電子情報技術産業協会(JEITA、石塚茂樹会長)とドライブレコーダー協議会(JDRC、宮嵜拓郎会長)が10月20日まとめた2020年7~9月のドライブレコーダー国内出荷台数は、統計を開始した16年度以降で最多となる135万1821台だった。

コロナ禍を受けて5四半期ぶりに100万台を割った4~6月から一転、大幅な復調を示した。16~19年度の累計出荷台数が1千万台に達し、日常的にクルマを利用する層の需要は一巡したとの見方もある中、依然として高い引き合いを誇る背景にあるのは、法改正をめぐるユーザーの高い安全意識だ。

■法改正追い風に需要底堅く

販路別の国内出荷統計を前回(1~3月)の公表値と比較すると、コンシューマ用が4万3664台増の102万442台、業務用は18万3024台増の33万1379台だった。とりわけ業務用はこの半年の間に2倍超となるなど、コロナ禍を経ても市場成長が持続していることが分かる。

需要が引き続く要因として指摘されるのが、6月末に改正道路交通法が施行され、妨害運転に関する罰則が創設されたことだ。急ブレーキや車間距離不保持などにより他の車両の運転を妨害した場合、運転免許の取り消しに加え、最大で懲役3年が課せられるほか、著しい交通の危険を生じさせた場合には最大で懲役5年が課せられる。

ディーラーや用品店など販売現場ではこうした法改正を積極的に周知しており、ある用品チェーンでは法改正を控えた6月下旬の販売ペースが、前年比約3割増で推移したという。

「自分が加害者にならないためにも必要な商品」(担当者)との認知が広がりつつある格好だ。ホンダアクセス(白土清成社長、埼玉県新座市)が今月公表した調査でも、道交法改正を「知っていた」とする回答は8割超に上った。

一方で高年齢層などではドライブレコーダーに馴染みの薄いドライバーも少なくないが、「報道や店頭での告知を見た子ども世代が親に取り付けを促すケースも増えている」(あるメーカーの社長)という。安全意識が高く「新しいもの好き」なユーザーに支えられてきた市場のすそ野が拡大している一例だ。

レコーダー自体の技術も進歩する中、1カメラ型を保有する初期の購入者に前後2カメラ型、360度型など高性能機への買い替えを訴求する動きも高まっている。新規需要と買い替え需要がともに堅調なことから、当面は市場成長が続くとの期待をもってメーカー各社は商品展開に引き続き注力する構えだ。

■新車が今後の市場規模を左右

必須用品としての地位向上が進む中、各社が注視するのは新車メーカーの動きだ。三菱自動車は今月開始したリース商品「ウルトラマイカープラン」に、任意保険や通信機能付きドライブレコーダーを標準で付帯した。トヨタ自動車が6月に発売した「ハリアー」は、デジタルルームミラーに前後2方向の録画機能を内蔵した。

こうした搭載例が定着すればアフター市場への影響は必至だ。一方で、国内の自動車保有台数は8千万台近くに上る(5月末時点、自動車検査登録情報協会調べ)。

レコーダー未装着の既販車は決して少なくないだけに、パーソナルモビリティとしての自動車利用が見直されつつある中、安心・安全を守る商品としての拡販余地はまだまだ大きいと各社は前を見据える。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞10月30日掲載