自動車メーカーが車体の軽量化と衝突安全性を両立する部材の多様化を加速している。スバルは新型「レヴォーグ」で、センターピラーやフロントフェンダーなど部位に応じてホットスタンプ材やアルミ材を最適に使い分け、乗員保護性能を高めた。
ホンダはボディー骨格やインテリジェントパワーユニット(IPU)ケースへの超高張力鋼板(超ハイテン材)の適用を広げ全方位での衝突安全性を確保した。日産自動車は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の量産化技術を開発した。環境規制の強化や衝突安全評価の厳格化を見据え、各社は最適な部材の適用を急ぐ。
スバルは、新型レヴォーグのボディー骨格に対して高強度・軽量化部材を積極的に取り入れた。センターピラーには引っ張り強度1・5㌐ パスカル のホットスタンプ材を導入する一方、フロントフェンダーやフードにはアルミ材を採用。
「フロントヘビーになりがちなところにアルミ材を使うことで軽量化を図った」(レヴォーグ開発責任者の五島賢商品企画本部・プロジェクトゼネラルマネージャー)と、軽量部材の最適な配置により車の基本性能の向上も狙う。
「スバルグローバルプラットフォーム(SGP)」を導入するとともに、外板パネルを最後に接合する「フルインナーフレーム構造」も国内モデルで初採用したことなどによりボディー剛性を大幅に引き上げた。
ホンダは、「ホンダe」で超ハイテン材の適用範囲をホワイトボディーやIPUケース、サンシェードフレームにも広げた。超ハイテン材のボディー骨格への適用比率は37・3%。衝突時の入力を効率良く伝達する構造も取り入れたことなどにより、全方位衝突安全性能を実現する。
日産は、2024~25年ごろのCFRP部品の量産化にめどをつけた。新開発の「C-RTM(コンプレッション―レジン・トランスファー・モールディング)」工法により、素早く均一に繊維に樹脂を含侵することが可能になり、成形時間を従来工法に比べて約8割短縮。同工法の導入に当たりシミュレーション技術も開発した。
国内外での燃費規制の強化に伴い、燃費向上や航続距離の伸長につながる軽量化技術の開発の重要性が増している。一方、衝突時の安全性確保の基準を厳格化する動きも出ている。
国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)は、自動車アセスメント(JNCAP)の衝突安全性能で、走行する車同士の衝突試験の導入に向けた検討を20年度から行うとしている。
欧州の自動車安全テストのユーロNCAPでは先行して導入され、日本でも23年度ごろの予備試験を予定する。軽量化と衝突安全評価の要件を満たす部材開発が今後も求められそうだ。