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自動車産業インフォメーション

2020年10月27日

自動車業界 政府のCO2排出ゼロ方針、温暖化対策の加速確実

自動車業界で温暖化対策に向けた取り組みが一段と加速しそうだ。26日開会の臨時国会で菅義偉首相が二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする方針を表明。各社はこれまでも長期ビジョンなどとして50年を見据えた方針を公表してきたが、より実効性のある取り組みが求められそうだ。

政府は30年度に13年度比で温室効果ガスを26・0%削減する必達目標を掲げている。ただ、欧州連合(EU)が19年に掲げた「実質ゼロ」の実現時期である50年時点の日本の目標は80%減にとどまり、実質ゼロの時期は明確にしていなかった。

温室効果ガスの低減に向けて自動車産業が関わる領域は主に二つだ。一つは日本全体のCO2排出量の2割を占める運輸部門。

21日に日産自動車の情報発信拠点「ニッサンパビリオン」を視察した小泉進次郎環境相は「脱炭素社会の実現などのためにはEV(電気自動車)が不可欠だ。EVに対する支援を充実させたい」と述べ、欧州主要国と比べて低い水準にある日本のEV購入補助制度を拡充する考えを示した。

再生可能エネルギーの供給拡大や低価格化も重要なカギになる。また、燃料電池自動車(FCV)の普及に向けた水素ステーションの拡充なども加速させる必要がある。

ただ、今後の技術開発や政策支援といった普及の道筋が明確とは言えないEVやFCVに偏らせるのは現実的ではない。ハイブリッド車(HV)を含む内燃機関の使用を前提とした技術革新も必要で、自動車メーカーではCO2を材料に用いる合成燃料の研究開発も急ぐ。

ホンダは再生可能エネルギーを合成燃料にも活用することでカーボンニュートラルの実現を目指す「マルチパスウェイ戦略」を進める。50年を見据えて「CO2ゼロチャレンジ」を掲げるトヨタもHVやプラグインハイブリッド車(PHV)を軸に環境対応を進める。

運輸部門でCO2排出の約4割を占める大型車の対策も不可欠だ。日野自動車は50年までにすべての車両を電動化する方針を掲げるほか、いすゞ自動車も3月に製品のライフサイクル全体での温室効果ガスゼロなどを目指す「環境長期ビジョン2050」を策定した。

運輸部門とともに、自動車各社がCO2の削減を進めるのが排出全体の3割を占める工場などの産業部門だ。スズキは、地球温暖化対策として国内外で再生可能エネルギーの利用を推進している。

湖西工場(静岡県湖西市)に風力発電設備を導入したほか、浜松工場(同浜松市)などでは太陽光発電設備も設置し、CO2の削減に取り組む。ダイハツ工業は低炭素社会の実現に向けた取り組みの一環として、19年10月に滋賀工場(滋賀県竜王町)に太陽光発電設備を導入した。50年までのCO2排出ゼロに向けて再エネの導入を順次拡大する方針だ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞10月23日掲載