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2020年10月16日

日刊自連載「変わる価値観 ディーラービジョンから見えるもの」(中)

新車販売市場が縮小する中、新車ディーラーは非新車部門による収益性を高めることで経営基盤を強化してきた。ただバリューチェーン化のベースとなる自動車保有台数は今後、目減りしていくことが確実な状況にある。

日本自動車販売協会連合会(自販連、加藤和夫会長)は「ディーラービジョン2019年版」で中・長期保有台数推計を示し、35年度には登録車と軽自動車を合わせても7千万台を下回ると試算。クルマ離れが進む若年層の取り込みや新たなモビリティサービスによる消費者との接点づくりが求められる。

自動車ビジネスの裾野を広げるためには、いかにして非自動車保有車に効果的にアプローチできるのかが重要だ。こうした課題への糸口として関心が高まっているのがカーシェアリングを活用したユーザーとのタッチポイントづくり。

同ビジョンによると、20~30歳代の若年層を対象にした調査では「シェアリングやサブスクリプションサービスは合理的で利用したい」と答えた人が47%と半数に上った。特に20歳代や女性にその傾向が強かった。

実際、交通エコロジー・モビリティ財団の調査によると、2020年3月の国内カーシェアリング車両ステーション数は1万9199カ所と2万拠点に迫り、前年同月と比べ10・9%増加した。

さらに車両台数も同15・2%増の4万290台、会員数は同25・8%増の204万6581人に達するなど、市場は右肩上がりで伸びている。

特に同ビジョンでは、試乗車を活用するなど、ディーラーの特徴を生かしたカーシェアに可能性があると指摘している。

20~30歳代の非自動車保有者への調査では、ディーラーのカーシェアに望む点として「車の品質・状態の良さ」が25%を占め、「利用可能な車種の多さ」が20%、「新型モデルなど関心のあるクルマに乗れること」が17%と、ディーラーならではの特徴を求めていることが浮き彫りとなった。

すでにディーラーによるカーシェアはトヨタ系ディーラーが「トヨタシェア」を全国各地でスタートしているほか、独自サービスや既存のカーシェア事業者と連携した事業を立ち上げるケースが出ている。このほか、自動車メーカーではホンダや日産自動車がカーシェアを運営している。

また月定額で自動車を利用できるサブスクリプションサービスについては「月額を低く抑えられる中古車の活用が有望」とした。サブスクサービスへの月額許容金額は、2万円以下が65%を占め、平均で1万9千円。

中古車に限った場合では、平均1万6千円となり「1万~3万円の範囲で需要が見込まれる」とした。エントリー層に向けた、品質や清潔さが保たれた中古車による低価格プランが求められている。

自動車のサブスクサービスは大手中古車専業店で商品化しているほか、自動車メーカーも相次いで乗り出している。2019年2月にトヨタ自動車が「KINTO(キント)を立ち上げたほか、日産も「クリックモビ」をスタート。

ホンダは利用期間を1~11カ月に設定した中古車サブスク「マンスリーオーナー」を全国のディーラー拠点に広げており、今後の市場拡大が期待されている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞10月1日掲載