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2020年10月14日

カーナビ各社、新領域開拓 エンタメやデータ事業に商機

カーナビメーカー各社は、将来的なカーナビ市場の縮小を見込み、新規領域の開拓を加速させている。自動運転やシェアリングなどで注目される車室内でのエンターテインメント領域や、プローブデータを生かしたデータ事業など、新領域に商機を見出す。

すでに新領域が業績に貢献するケースも出てきた。カーナビで培った要素技術に外部企業の知見を取り入れ、各社とも新領域をカーナビに代わる柱に成長させる考えだ。

電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2019年のカーナビ国内出荷台数は前年比1・7%減の604万1千台。今後スマートフォンの無料ナビアプリが高機能化すれば、カーナビ需要が縮小する可能性もある。

新車装着の純正品も、外部とつながるコネクテッド機能やヘッドアップディスプレー対応などで開発費が増えつつあるため、収益拡大による開発費の確保が必要だ。

アルプスアルパインは、他社とアライアンスを組みながら、センサーやモジュール領域の強化を図っている。同社が成長エンジンと見込むのは、主にヒューマンマシンインターフェース(HMI)やコネクティビティ、センシング領域だ。

5月に触覚で情報伝達するハプティック技術に強みを持つ米イマージョン社とのライセンス契約を見直し新たに締結。8月には米マッキントッシュグループと車載用高級オーディオシステムの開発で提携を結んだ。

本格的な自動運転社会が到来すれば、エンターテインメント領域が重要視される。アルプスアルパインは統合型コックピットで必要となる技術・製品の提案を強化し、自社でカバーできない部分は協業する。「得意な領域以外は異業種連携が重要。他社と組んだ方が市場投入も早い」(同社)としている。

パイオニアは、自動運転社会に向け、3DLiDAR、自動運転用地図、統合型コックピットの3軸で攻勢をかける。中でも3DLiDARは「3つの中で実用化が最も早い」(同社)として特に注力している。

19年4月には小型かつ低コストのMEMS(微小電気機械システム)式3DLiDARの開発でキヤノンと共同開発契約を結んだ。自動運転バスの実証実験に提供するなどして、さまざまな知見を集めている。

統合型コックピットでは、5月にコンチネンタルとの協業を発表。カーナビで培ったエンターテインメント系ソフトウエアを提供する。パイオニアは今後「コンチネンタル以外への技術提供もありうる」として、車載インフォテインメント領域で存在感を示す考えだ。

JVCケンウッドは、通信型ドライブレコーダーを核としたテレマティクスサービスを手掛ける「DXビジネス事業部」を成長の柱に位置付ける。19年からライドシェア大手グラブのドライバー向けに通信型ドライブレコーダーを活用した安全サポートを開始。

今年2月にはゼンリンと業務用車両向けテレマティクスサービス分野で提携すると発表した。ドライブレコーダーで撮影した映像や走行軌跡情報などのプローブデータを、タクシーやトラック事業者の運転支援に役立てる。

19年度は同事業部が目標に掲げていた売上高100億円を達成した。20年度は同事業部で150億円の売り上げを目指す。

フォルシアの事業部門フォルシア・クラリオン・エレクトロニクスは、クラリオンがカーナビやオーディオで培ったエレクトロニクス技術と、統合したフォルシアのインテリアの知見を融合させたコックピット周りで存在感を示す。

その一環で、クラリオンが吸収合併したパネルの張り合わせ技術に強みを持つ台湾企業の技術力を活用し、大型ディスプレーの開発を進める。まず中国の地場系電気自動車メーカーをターゲットに受注獲得を目指すとする。

カーナビ各社は、次世代車への対応力向上を急ぐことで、事業規模の維持・拡大を目指している。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞10月9日掲載