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2020年10月9日

ホンダ 「安全運転普及本部」が発足50年

ホンダが「安全運転普及本部」を設立してから1日で50年を迎えた。設立した1970年にピークに達した交通事故死者数は、技術の進化や安全意識の啓発などで減少してきた。

一方、先進安全技術の高度化が進めば進むほど、技術への過信による事故も生まれる。事故ゼロ社会のために自動運転を実用化したとしても機能の限界などを正しく理解しなければかえって危険が生じるリスクもある。従来の啓発活動に加え、技術の進化や社会の変化に合わせた新しいアプローチも模索する。

60年代、モータリゼーションの進展とともに交通事故死者数は拡大し、70年には1万6765人に増加した。死者数の多さから当時「第1次交通戦争」とも呼ばれる社会問題になった。

その年、ホンダは二輪車・四輪車メーカーとして初めて交通安全の啓発に特化した専門組織を設立。交通安全の取り組みを国内外で進めてきた。

取り組みの一つが交通安全の重要性を伝える人材の育成だ。ホンダは64年に鈴鹿安全運転講習所を開設。現在は鈴鹿サーキット交通教育センターに改称し、企業や団体向けに指導者育成を実施するとともに、販売店スタッフ向け研修を実施する。

顧客との直接接点となる販売店の役割は大きい。例えば、90年代はじめに普及が進んだアンチロックブレーキシステム(ABS)は「短い距離で安全に止まるブレーキ」、エアバッグは「衝突時に必ず作動する」と一部で誤解が広がり、事故や怠慢な運転につながるリスクが問題視された。

そうした中、ホンダは安全装備について知識を習得した人材「セーフティ・コーディネーター」の養成を開始。開始から3年で累計7300人を養成し全販売拠点に配備した。

直近10年では、衝突被害軽減ブレーキシステム(AEBS)も同様に機能に対する過信が懸念される状況になった。

「ホンダセンシング」の搭載拡大に合わせ、AEBSの体験試乗会を実施するための社内資格として「アドバンスト・セーフティ・コーディネーター」を2018年に本格導入。現在までに約830人を養成し、各法人がAEBSの体験試乗会を安全に実施できる環境を整備した。

さらに今後、自動運転の実用化を見据えて教育の内容を見直す。安全運転普及本部長を務める竹内弘平専務取締役は「技術の進歩にもよるが、自動運転中に自動運転車がどういう時にどう動くのか、教育に取り入れていく必要がある」という。

コロナ禍で非接触ニーズが高まる中、ヘッドマウントディスプレーを用いた仮想現実(VR)技術を活用する「疑似体験学習」などの導入も検討する。

自動運転レベル3の技術を搭載した車両の年内投入を目指すホンダ。先進技術の実用化や普及を急ぐ一方、交通安全啓発活動を改めて強化し、事故ゼロ社会の実現につなげる。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞10月3日掲載