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自動車産業インフォメーション

2020年10月9日

自動車大学校・整備学校 21年度の入学者確保に苦戦

自動車大学校・整備専門学校が2021年度の入学者数確保に苦悩している。若年人口の減少やクルマ離れなど従来からの逆風に加えて、コロナ禍が追い打ちをかける。

オープンキャンパスなど高校生とその両親へのアピール機会が激減し、渡航制限で外国人留学生の確保もままならないのが現状だ。募集定員を満たせる見通しの自動車大学校・整備専門学校は少なく、大幅な定員割れに陥るケースも予想される。

入学者数の大幅減はディーラーなど企業側の新卒採用活動にも影響を及ぼし、今後の採用計画の見直しを迫られる可能性がある。深刻な整備士不足に拍車がかかる。

「今年に関しては手の打ちようがなく、どうしようもない」。東京都内のある整備専門学校の関係者がこう打ち明ける。計画する21年度の募集定員のうち、10月現在は約半数しか入学者数を確保できていないという。多くの自動車大学校・整備専門学校では入学者確保に苦戦している模様だ。

学校関係者への取材を通じて多く聞かれたのは、オープンキャンパスや学校説明会の参加率が芳しくなかったことだ。5月末まで約1カ月半の緊急事態宣言期間中は私立、公立問わず全ての高校が休校を余儀なくされ、授業の遅れを取り戻すために夏休みが短縮された。

そのため、高校生は夏休みを利用した学外イベントに参加することが難しかった。

自動車大学校・整備専門学校はこれまで、夏休み期間のオープンキャンパスを多くの高校生やその両親と接触できる絶好のアピール機会としていただけに、高校の夏休み短縮は大きな痛手だった。

首都圏の整備専門学校では、東北や北陸など地方出身の学生も少なくない。しかし、コロナ禍で高校生の進学希望は地元志向が一段と強くなったこともあって、21年度の入学者数の減少にも結び付いている。

「オープンキャンパスでは、昨年まで数人いた高校1、2年生の参加者がほぼゼロになってしまった」(別の都内の整備専門学校の関係者)との事例もあり、22年度以降の入学者確保の見通しも不透明だ。

インターネットを活用したデジタルオープンキャンパスを実施する動きも広がったが、参加した高校生を入学志願につなげることができたかなどの成果や課題については、今後の分析と検証を待つ必要がある。

実際にデジタルオープンキャンパスを実施した埼玉県の整備専門学校の関係者に成果を聞くと、「現実的に問い合わせは少なく、それほど手応えは感じていない」という。

ここ数年、拡大を続けてきた外国人留学生についても懸念が広がる。外国人の入国制限がある中で、来日する意思があっても入国に制限がある状況が続く。

自動車大学校・整備専門学校によっては、来日から1年程度日本語などを学習した後、入学者を受け入れるケースがある。この場合、来年度はある程度の入学者数を確保できるものの、再来年度以降の入学者減は不可避だ。

◇   ◇

厚生労働省の調べによると、19年の全国の出生者数は前年比5・9%減の86万4千人だった。100万人を割り込むのは4年連続で、統計開始以来過去最低を更新した。

今後も18歳人口の減少に歯止めはかからず、整備士不足の解消は難しい状況が続く。

全国自動車大学校・整備専門学校協会(JAMCA)では「整備士の魅力をアピールし、キャリアプランを提示しても多くの若者には響かないのが現状。整備専門学校関係者だけでなく、自動車業界全体が一丸となってもっと真剣に考える必要がある」(中川裕之会長)と危機感を訴えている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 大学・専門学校,自動車業界

日刊自動車新聞10月6日掲載