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自動車産業インフォメーション

2020年10月6日

部品メーカー各社、異業種へ提案拡大 技術ノウハウ生かす

部品メーカーが自動車部品のノウハウを生かし、異業種へ提案の幅を広げている。コンピューターや住宅、医療などは自動車とは程遠い分野だったが、自動車技術の進化やIT(情報技術)の広がり、新型コロナウイルスなど感染症への対応などで垣根がなくなっている。

自動車向けで培った技術を、自動車以外でも適した分野があれば拡大しようとする動きが広がっている。

自動車用チューブを手がける三櫻工業は今月、冷却水用樹脂配管製品がスーパーコンピューター「富岳」に採用されたと発表した。富岳は理化学研究所と富士通が共同開発したスーパーコンピューターで、6月発表の性能ランキングでは世界1位を獲得した。

三櫻工業の樹脂配管は膨大な演算処理で生じる熱を冷ます冷却装置に使われている。同社の樹脂製品が自動車以外の分野で採用されるのは、今回が初めてとなる。

自動車用キーセットやスマートキー大手の東海理化は、店舗やオフィス、ロッカー用などでデジタルキーを活用したサービスを開拓する。今月、スマートフォンなどを使用したデジタルキー事業を手掛けるdotD(小野田久規代表取締役CEO、東京都港区)との協業を発表した。

両社でデジタルキー機器や事業モデルを開発する。東海理化は、新規事業としてスマホを使う車両キーの認証やデジタルキー配信技術を開発している。自動車での実用化に向けた協業にも取り組んでおり、自動車以外の分野でも協業による事業化を狙う。

日本ピストンリングは、内燃機関(ICE)の技術を生かした製品開発で、産業機械向けの薄型モーターや医療用新素材にも力を入れている。自動車の材料や表面処理、粉末冶金、精密加工技術などが生かせる。

医療用素材はオイルリングの材料として開発したニッケルフリーのチタン合金「ニフリート」を医療用術具やカテーテルなどに提案する。生体親和性やX線の視認性が優れるなどの特徴を有する。

医療分野では、ステアリング大手のジェイテクトが車内レイアウトや設計、品質管理などのノウハウを活用し、トレーラー型の移動式PCR検査施設を製作した。もともと徳島大学と移動式の実験施設として製作していたが、新型コロナウイルスの感染拡大で方針を転換した。

製作したのは同社の研究開発本部のFFR部。既存事業以外の領域の研究開発も担う部署で、移動式検査施設は企画から半年弱での提供にこぎつけている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞9月28日掲載