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2020年9月29日

対話型音声認識、広がる機能 採用車種拡大、日系メーカーも

車内でスイッチを使用することなく、エアコンなどの操作や交通などの情報を取得できる対話型音声認識機能の実用化が本格化してきた。欧州勢ではメルセデス・ベンツが新型「Sクラス」で「MBUX」を後席乗員も利用できるように機能を拡充。

日本のメーカーでもホンダが「ホンダe」に「パーソナルアシスタント」を搭載したほか、トヨタ自動車もAIエージェント「YUI」の開発を進める。音声認識機能の採用拡大により、安全性や運転中の快適性を高める考えだ。

対話型の音声認識技術で先行するのは欧州メーカーだ。日本市場に投入しているモデルでは2018年にメルセデス・ベンツが「Aクラス」に採用。19年にはBMWも「3シリーズ」に搭載した。フォルクス・ワーゲンも「ゴルフ」に搭載するなど採用拡大を進めている。

メルセデス・ベンツはさらにドイツで発表した新型Sクラスで認識性能を向上し、音声を発した乗員を識別できる機能を追加。例えば、後席乗員が「リラックスしたい」といえば、その乗員を対象にシートの位置やヒーターを自動で調整する。

一方、日本のメーカーはこれまで音声認識による機能操作は目的地検索などの一部にとどまっていた。国内市場向けの車両の場合、独立したカーナビゲーションを中心とするインフォテインメントシステムの構成になっているためだ。

そうした中でホンダは10月末に国内投入するホンダeでパーソナルアシスタントを初搭載する。クラウド上の人工知能(AI)を活用することにより、従来の音声認識よりも自然な発話に対応。現状では目的地検索や天候情報の取得といった機能にとどまるものの、今後は空調や追従走行の設定などにも機能を拡張していくことを検討する。

音声認識の市場ではIT企業の存在感も大きい。新車への搭載に加え、25日には米アマゾンが後付け可能な車載用音声認識デバイス「エコーオート」の販売を日本で開始した。

音声対話により、ハンズフリーで音楽の再生やニュースやスケジュールの確認、空調の制御などが可能になる。IT企業は運転中の車内の情報をデータとして蓄積し、新たなサービスの提供につなげる狙いがある。

音声認識技術は新型コロナウイルスで高まる非接触ニーズに応える機能ともいえる。コロナの感染拡大以降、不特定多数のドライバーが利用するシェアリングの市場は縮小したが、スイッチ類の接触を減らす音声認識機能が拡張されれば需要の拡大につながる可能性もある。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞9月26日掲載