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2020年9月24日

独ダイムラー 航続距離1千㌔のFCトラック開発

独ダイムラーでトラック、バス事業を手がけるダイムラー・トラックは16日、航続距離1千㌔㍍の燃料電池(FC)トラックを開発したと発表した。2023年をめどに一部顧客を対象に試験運用を開始し、20年代後半には量産化する。

1回の充電で500㌔㍍を走行できる電気自動車(EV)のトラックも20年代半ばに投入する。欧州ではトラックやバスの二酸化炭素(CO2)の平均排出量を30年に19年比で30%削減しなければならない規制が導入される。環境規制への対応を見据えた電動化を巡る各社の競争が激化してきた。

FCトラックのメルセデス・ベンツ「GenH2」は、車両総重量40㌧、有効積載量25㌧の大型トラック。FCシステムの構成は、200セルで構成する出力150㌔㍗のFCスタックを2基、最大出力330㌔㍗のモーター2基、40㌔㌘の水素を充てんできるステンレス製タンク2本、容量70㌔㍗時のバッテリーで構成する。

水素ガスよりもエネルギー密度が高い液体水素を使用することにより、タンクの小型化や軽量化を実現し、荷室空間や積載重量を確保する。

FCトラックは、ルートが定まっていない長距離輸送を主な用途として想定する。主要幹線道路を往復するのみの輸送であれば「500㌔㍍で十分」(マーティン・ダウム会長)とし、同日発表した長距離仕様の「eアクトロスロングホール」で対応する。いずれも日本への導入は未定。

FCトラックの量産化に向けてダイムラー・トラックは今年4月、ボルボ・トラックと合弁会社を設立すると発表。さらに、ロールス・ロイスのパワーシステム事業部門とも定置型燃料電池システムの領域で提携することを決めた。

総需要が少ない商用車の世界で投資コストがかかる電動技術を実用化するためには他社との提携による量の確保が欠かせないためだ。

それでもコストの課題は大きいが、ドイツ政府の後押しも強力だ。連邦政府は6月、水素技術の実用化のために総額90億 ユーロ (約1・1兆円)を投じると発表。70億 ユーロ は国内の技術開発への支援、20億 ユーロ は国際協力に充てる考えでインフラの整備なども進める。

日本メーカーでは日野自動車がトヨタ自動車と、いすゞ自動車がホンダと協力し、FCトラックの事業化を目指す。韓国の現代自動車はすでに欧州でFCトラックの出荷を開始しており、競争が激しくなりつつある。

ダウム会長は16日の車両発表イベントで競合他社に対して「リスペクトはするが、恐れはない」と言及。世界シェアトップのスケールメリットを生かし、FCトラックの普及促進を図る。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞9月18日掲載