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自動車産業インフォメーション

2020年9月23日

日刊自連載「自動車整備業界 動向調査レポート」(上)業績見通し

日刊自動車新聞社は5~8月、経営コンサルタントのフォーバルと共同で、整備業経営者を対象にアンケート調査を実施した。大半が新型コロナウイルス感染拡大によるマイナスの影響を感じており、8割以上が先行きに不安を抱えていることが分かった。

コロナ禍により消費者マインドが冷え込むことが懸念される上、整備技術の高度化への対応、人手不足、事業承継など「不安要素が多数ある」(秋田県の指定工場)実態が浮き上がった。一方で、「淘汰の時代は必ず来ると思うが、そこをしっかり乗り切っていけば、その先は少しは安定するのではないか」(山形県の指定工場)といった前向きな声も聞かれた。

調査は5月11日~8月17日に実施し、全国の750社から有効回答を得た。

新型コロナウイルス感染拡大が多くの産業にダメージを与える中、整備業界も例外ではない。今回の調査でコロナが業績に及ぼす影響について「ややマイナス」が48・7%、「マイナス」が35・6%で、合わせて84・3%と8割を超えた。

整備事業者の主な収益の源泉であるのが法定需要。今春の緊急事態宣言期間中も整備業は休業要請の対象業種にはならず、入庫台数は前年並みで推移するケースが多かった。

一部生産活動の停止などが物流に影響したり、外出自粛期間中はマイカーの走行距離の減少に伴い、車体整備需要の減少などが見られた。また、車販や用品販売などさまざまな形で収益がマイナスに作用する実情が浮き彫りになった。

今後の業界見通しについても「やや悪い」が50・4%、「悪い」が31・2%と、悪影響を想定する声が8割以上を占め、先行きを懸念する事業者が多い。コロナ禍で経済全体の先行きは見通し困難な状態が続く。

ユーザーの消費行動や価値観に変化が表れ始め、社会状況や生活様式の変化が整備事業者の経営環境を変える可能性があり、不透明感を一段と強くしている。

加えて、整備業界を取り巻く環境が今後激変する。需要の減少よりも「生き残り」に対して不安視する声が多く寄せられた。4月にスタートした「特定整備」制度や2021年から始まるOBD(車載式故障診断装置)診断、24年からのOBD車検と相次ぐ新制度への対応も求められる。

「専業工場がいかに生き残れるか、どのように対処していくか厳しい問題」(山形県の指定工場)、「生き残りをかけて投資しなければならない」(静岡県の指定工場)と喫緊の課題として捉えられている。

一方で、少数意見ながら今後の見通しについて「やや良い」(3・7%)、「良い」(0・1%)とみる向きもある。「特定整備がどの程度貢献するのか楽しみ」(静岡県の指定工場)、「特定整備、OBD車検、自動運転などさまざまなことが始まるが、これらは追い風になると思っている」(新潟県の指定工場)と意欲的な事業者もいる。

整備事業者それぞれの経営環境、収益状況、人材戦略は多種多様で、コロナ禍でも確実に利益を拡大する事業者が存在する。新たな展開を模索しながらビジネスチャンス拡大を図っていく動きも出ている。コロナ禍でも前向きに取り組む回答者の多くが、楽観的な見通しを持ったとみられる。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞9月17日掲載