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自動車産業インフォメーション

2020年9月8日

自動車メーカー各社、電動車で被災地支援拡大 自治体と連携

災害時に電動車を活用する動きが広がっている。トヨタ自動車とホンダは燃料電池(FC)バスと外部給電器などを組み合わせた移動式給電システムの実証実験を開始。日産自動車や三菱自動車も自治体との提携を加速する。昨年9月に千葉県などを襲った台風15号の教訓を生かし、自動車メーカー各社は災害支援の新しい形を模索する。

トヨタとホンダは、トヨタのFCバスにホンダの可搬型給電器やバッテリーを積載し、避難所や停電中の家屋などに電力を供給する実証実験を開始した。FCバスで被災地付近まで移動し、ホンダの給電器や2種類のバッテリーで用途に応じて電力を供給することによって「電気のバケツリレーを実現する」(ホンダの岩田和之エグゼクティブチーフエンジニア)。

災害時における外部給電器やバッテリーの活用を促進するホンダが普及に向けて強調するのが、「フェーズフリー」の考え方だ。フェーズフリーとは平時・非常時を問わず活用できる機能を指す防災のコンセプト。

災害時のためだけにインフラを整備するとコストが割高になるほか、有事の際に使用方法が分からずに十分に活用できないケースも想定される。実際、昨年の台風15号では「災害時などに備えて購入されていた発電機が、半分しか使われていなかった」(岩田氏)。インフラを普及させるには平時の用途開拓が重要になる。

用途の1つが音楽ライブでの活用だ。ホンダとトヨタは2017年、ロックバンド「LUNA SEA」のライブに燃料電池車の電力をホンダの外部給電器を介してアンプなどに供給する取り組みを実施。19年には「U2」のライブにも両社で電力を供給した。

岩田エグゼクティブチーフエンジニアは「電気を必要としている所は思っている以上に多い」とし、ライブのほか、屋外でのイベントなどでの需要を開拓する考え。コロナ禍を背景とするテレワークの拡大が外部給電器やバッテリーの普及を進めるきっかけになるとも見込む。

電動車を活用した災害支援は日産や三菱自も積極的に進めており、日産は全国50件以上の企業や自治体と災害時にEVを派遣する連携協定を締結した。

日産の場合、可搬型パワーコンディショナーとリーフで生活家電に使用する電力を供給してきたが、その中でエレベーターなどの業務用機器を作動させたいという介護施設などのニーズも見えてきたため、業務用機器を動かせる定置型パワコンの導入する準備も進めている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞9月3日掲載