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2020年8月31日

日刊自連載「流れを読む 国内マーケット展望」(5)中古車

中古車の価値が再認識されている。新型コロナウイルス感染予防のために公共交通機関からマイカーでの移動に切り替える需要増を追い風に、中古車小売り市場で復調が進んでいる。コロナ禍の影響で新車の生産が滞ったことや景気の先行き不安感などから、納期が短く価格が安い中古車に注目が集まったからだ。

中古車登録・届出台数は、緊急事態宣言発令下の5月を底に、6月は9カ月ぶりに前年を上回った。一方で、新車販売の動向に流通量が左右される中古車オークション(AA)は、出品車両の確保に苦戦する状況が続きそうだ。中古車輸出も依然として落ち込み幅が大きく回復の見通しは不透明だ。

2020年上期(1~6月)の中古車登録・届出台数は、前年同期比4・8%減の346万6447台だった。6月は前年同月比4・8%増の57万2840台で、同19・9%減と大幅に落ち込んだ5月と比べてマイナス幅が24・7㌽縮小した。

外出自粛期間の反動や感染防止のために安価な中古車を求める動きが活発化したことで、9カ月ぶりの前年超えとなった。4~6月累計は同6・9%減の155万7928台だった。

地域によって差はあるものの「6、7月の来店客数は前年並みに戻ってきている」(中古車販売店関係者)との声は多く、7月に過去最高益を上げた中古車販売店もあった。業界関係者の中では、中古車小売りは下期にかけて順調に回復するとの見立てが多くを占める。

AA市場では、海外における新型コロナウイルス感染拡大を背景に輸出事業者の応札が弱まったことで、多くのAA会場は2月下旬から3月上旬にかけて成約率が大幅に落ち込んだ。出品台数も前年比で2~3割以上落ち込む状況が続いている。

6月に入って新車販売は回復基調にあるが、中古車市場への影響は数カ月遅れて表れるため、「下期も低調に推移しそうだ」(AA関係者)という声が多数を占めている。

緊急事態宣言解除後は、出品台数の減少も相まって仕入れ競争が激化し、成約率、相場ともに高止まりする状況が続いている。1月にトヨタオートオークション(TAA)兵庫会場(兵庫県西宮市)が、6月にミライブ愛知会場(愛知県弥富市)がそれぞれ新規オープンしたことで、出品車両の集荷競争やバイヤー誘致もますます激しくなる見通しだ。

こうした状況を踏まえ、中古車買い取り・販売店では、顧客からの買い取り車両を小売りに活用したり、インターネットを通じて業者間で在庫を融通し合うなど、AAを介さない中古車流通システムを活用する動きも活発化している。

コロナ禍でもサービス入庫など車販以外の周辺領域は影響が限定的だったことから、販売からアフターサービスまで一貫して顧客を囲い込もうとする動きも加速しそうだ。

コロナ禍を背景に、各国で港湾機能や輸入の停止などを含めた都市封鎖(ロックダウン)に踏み切ったため、日本からの中古車輸出台数は、4、5月に前年同月比50%減と大幅に落ち込む結果となった。

6月は同31・9%減とマイナス幅は縮小傾向にある。仕向け地別では、ロシア向けが前年を上回る水準だったほか、港湾業務の再開を急ピッチで進めているニュージーランド向けなどが輸出のけん引役となった。

中東地域やアフリカの中継地点となっているアラブ首長国連邦(UAE)向けの輸出台数も回復基調にあるが、最終仕向け地での新型コロナの感染拡大を受けて先行き不透明感が漂っている。

コロナ禍を契機に、AA会場ではインターネットを通じて会場外から競り参加できる外部応札システムの利用率が伸びたとは言え、来場して現車を確認した上で応札するスタイルが大勢であることは変わっていない。

中古車小売りの現場においても、ビデオ商談など非対面型のツールは一部で導入が始まったばかり。新型コロナの収束時期が不透明な中、感染予防対策と事業の両立を図るためにはデジタル化への対応は避けられない。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞8月14日掲載