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自動車産業インフォメーション

2020年8月28日

日刊自連載「流れを読む 国内マーケット展望」(4)用品

4~6月累計の新車販売台数が前年比で30%以上のマイナスとなるなど、苦境にあえいだ自動車業界にあって、用品市場は一定の市場規模を固守した。自動車用品小売業協会(APARA)が公表した用品小売り大手4社の売上高は、4月が既存店前年同月比18・7%減、5月が同7・5%減となったが、6月は同1・5%増とプラスに転じた。

景気が低迷し、車両稼働量も大きく減少した中、タイヤやオイル、バッテリーなどの定期交換商品を抱える用品業界ならではの強みを示した。逆風にも耐え抜く商品群を武器に、下期での巻き返しが始まるか、注目が集まっている。

さまざまな分野の商品がそろう用品業界にあって、コロナ禍を受けてとりわけ大きな変化を見せたのがケミカル分野だ。洗車・補修用品の4~6月累計の売り上げは既存店前年同期比9・2%増と急拡大。

在宅時間の増加を受けて「初めて自分の手で洗車や補修に挑戦した人が増えた」(日本オートケミカル工業会の渕田昌嗣理事長)とみられ、継続的な消費行動の定着に向けて期待感も高まっている。

もっとも、市場回復のけん引役と目されるのは、高価格帯商品だ。昨年10月の消費税増税を受けた消費意欲の減退にコロナ禍が追い打ちをかけた格好となる中でも、用品メーカー各社は、高性能・高単価な新製品を続々と投入している。10万円の定額給付金の効果が現れれば追い風となるとの見方は強い。

とりわけ販売現場からの期待の大きい商品が、近年のトレンドでもあるドライブレコーダーだ。あおり運転などのトラブルが社会問題化していることを受け、2017~19年の国内出荷台数が毎年100万台以上増加し、累計で1千万台を超えるなど、用品の中でも成長性の高さが際立つ。

多くのドライバーにとって必須用品との認識が広がり、車両販売時の同時購入も多いことから、用品店だけでなく、新車ディーラーや中古車販売店などでも注力商品の1つに位置付けられている。

6月には改正道路交通法が施行され、あおり運転など路上での危険行為が厳罰化された。このような背景からユーザーの関心も引き続き高く、メーカー各社はコロナ禍の収束を前提に、今後も底堅い需要を見込む。

こうした中、各社が相次いで投入するのが高機能製品だ。8月にはJVCケンウッドやユピテルが、リアカメラ分離型の360度撮影機種を発売。前後はもちろん、車内のトラブルも鮮明かつ確実に撮影可能とした。こうした商品戦略の狙いは、すでにドライブレコーダーを保有するユーザーの代替需要掘り起こしにある。

ドライブレコーダーが定番商品として認知され始めて10年以上が経過し、危機管理意識が高いユーザーへの普及は一巡しつつある。これを受けて各社は、1カメラ機種や前後2カメラ機種など従来機種を保有するユーザーに対してさらに高機能な製品を訴求し、新規顧客の開拓と両輪で市場成長を図っている。

下期の新商品では、タイヤにも大きな動きがみられる。今年は複数の大手タイヤメーカーが、主力スタッドレスタイヤのモデルチェンジを実施。従来品よりもさらに向上させた冬季路面での走行性能を訴求している。

都市部では近年の急変しやすい冬季天候を反映して、オールシーズンタイヤの引き合いも高まっており、各社は豊富な選択肢を用意して、市場の盛り上げを加速させている。

今春はコロナ禍の影響で冬用タイヤから夏用タイヤへの履き替え需要が鈍るなど、ユーザーのタイヤ交換サイクルが不順化している。外出自粛や車両稼働の低下などを背景にメンテナンス不足も指摘される中、小売りの現場ではタイヤやバッテリーなど消耗品の安全点検にも注力する。

用品小売り各社は、入念に新型コロナウイルスの感染予防対策も講じながら店舗営業を継続。「販売部門を縮小することがあってもメンテナンス部門は死守する」(ある用品チェーンの担当者)と、強い使命感を持って地域のカーライフを支えている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞8月13日掲載