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自動車産業インフォメーション

2020年8月26日

自動車メーカー各社 採用車種増える「ハンズオフ」

高速道路など特定条件下で手放し運転を可能とする「ハンズオフ」機能を採用する車種が徐々に広がっている。スバルは、20日から先行予約を開始した新型「レヴォーグ」にハンズオフ機能などを実現する「アイサイトX」を初採用する。

トヨタ自動車はレクサスの旗艦車「LS」のマイナーチェンジモデルで高速道路の出口までドライバーの操作をほぼ必要としない高度運転支援技術を搭載する。日産自動車やBMWは昨夏にハンズオフ搭載車を国内市場に投入済みだが、手放し運転を実現する技術や機能はメーカーによってさまざまだ。

ハンズオフはドライバーが監視している状態であれば、ステアリングから手を放してもシステムが運転操作を継続する機能。ドライバーが前方を注視しているかシステムが確認するための「ドライバーモニタリングシステム」が必要となる。

あくまで運転の主体はドライバーであるため米自動車技術会(SAE)が定める自動運転「レベル2」の枠組みになるが、ペダルとハンドル操作をシステムが自動で行う〝レベル2プラス〟の技術と言える。

スバルは、衝突被害軽減ブレーキで運転支援システムの先鞭をつけた「アイサイト」の新世代システムを開発し、年内投入予定の次期型レヴォーグに搭載する。

高速道路上の運転支援では、高度化したカメラなどのセンシング技術に加えて、準天頂衛星「みちびき」とGPSによる位置情報と3D高精度地図データによってカーブ前や料金所前での速度抑制を実現する。ハンズオフについては、運転の楽しさを追求する同社らしく時速50㌔㍍以下の渋滞時に機能をあえて絞った。

トヨタが次期LSに搭載する「レクサスチームメイト」は高度な自動運転操作を実現するため、同社の量産車では初となる高性能センサーのLiDAR(ライダー)を前後左右に計4個搭載する。

高速道路ではドライバー監視のもとに車線・車間維持、分岐、追い越し操作などをシステムが行い、ハンドルとペダル操作からドライバーを開放する。同社はあえてハンズオフという表現をせず、ドライバーが安心して操作を任せられる総合的な運転支援システムであることを強調する。

日産は昨年9月に大幅改良した「スカイライン」に搭載した「プロパイロット2・0」でハンズオフを実現した。高速道路ではカーナビゲーションシステムに設定したルートに沿って出口までほぼ自動走行するのが特徴だ。来年半ばに国内投入する新型電気自動車「アリア」のプロパイロット2・0では準天頂衛星の位置情報を採用する方針だ。

BMWは3眼カメラなどでハンズオフ機能を実現するが、3D高精度地図やライダーは採用せず、時速60㌔㍍以下の渋滞時のみ作動する。量販車種「3シリーズ」に同機能を標準装備することで、手放し運転機能の普及を目指す。

ハンズオフ機能は、各社で機能や採用する技術に違いが生じている。スバルはアイサイトXと通常モデルとの価格差は35万円程度に抑え、戦略的な価格設定とした。

一方、同じ3D高精度地図を採用するスカイラインは、プロパイロット2・0搭載車を旧モデルと比べると約50万円高となるが、ハンズオフの機能範囲は広い。

今冬、マイナーチェンジし国内に投入する予定のLSは、より高度な運転支援機能を実装するが、高コストなライダーを乗用車で前例のない4個も搭載する。価格は未発表だが高価格帯になることも予想される。

国内では法改正によって4月から「レベル3」が解禁された。運転の主体がドライバーからシステムに代わり前方監視が不要な「アイズオフ」が可能となり、ホンダは年内導入を明言している。ただ、レベル3の実現には技術的な壁も高く各社慎重な姿勢を示しており、当面はレベル2の範囲内での自動運転機能高度化が進みそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞8月22日掲載