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2020年8月25日

日刊自連載「流れを読む 国内マーケット展望」(1)新車販売

新型コロナウイルスの感染拡大で営業活動の停滞を余儀なくされた新車販売市場が、復調の兆しを見せ始めている。5月を底に6月以降は2カ月連続でマイナス幅が縮小し、足元の受注状況は前年同月実績を上回るディーラーも少なくない。

感染防止対策として自動車による移動や所有が見直される動きもあるなど、追い風も吹き始めている。2019年後半の新車市場が消費税増税や大型台風による影響で落ち込んでいたこともあり、このまま回復基調が進めば、年後半には前年の水準を捉えることも出来そうだ。

ただ、新型コロナの感染状況によっては、再び通常の営業活動が出来なくなる恐れもある。ウィズコロナ時代に対応した営業スタイルへの取り組みが、新車販売の実績を左右する一因にもなりそうだ。

登録車と軽自動車を合わせた7月の新車販売台数は、前年同月比13・7%減の39万6346台。マイナス幅は6月より9・2㌽改善した。特に軽自動車は、3ブランドで前年同月を超える実績を記録するなどし、同1・1%減にまでマイナス幅を縮めた。

今後の見通しについては、年後半に向けた新車販売の回復を期待する声が少なくない。関東のトヨタ系ディーラーの社長は「年内には前年実績まで戻したい」とし、コロナの感染状況にもよると前置きした上で、年明けには前年同月実績を上回る水準を見込めるとしている。

トヨタ自動車では、6月から国内市場の活性化に向けて反転攻勢に打って出た。一時は、20年度新車販売が前年度実績の158万7千台(レクサス車、軽自動車含む)を大きく下回る130万台の水準に落ち込むと見ていたが、140万台以上をターゲットに系列ディーラーへの販売支援策を展開。

「すでに受注は積み上がっている。人気車の供給が進めば、数字は上がってくる」(関東のトヨタディーラー社長)と販売現場の表情も明るくなってきた。

さらに北関東で営業する日産ディーラーの社長も「前年の落ち込みが大きかった10月以降は、何としても前年超えを果たしたい」と新型車の投入を契機に取り戻しつつあるショールームの活気に手応えを得ている様子だ。

19年の後半は、10月の消費税増税や大型台風による営業活動停滞などで新車市場は落ち込んでいた。20年2月まで5カ月連続で前年同月比2桁減だったが、自動車メーカーの生産体制の正常化や新型車の投入なども背景に、今後は回復していくと見る向きが強い。

足元の市場環境が好転している一方、新型コロナの感染状況は予断を許さない状況だ。

感染拡大が本格化した2月下旬から営業活動が停滞したことにより、4~6月累計の新車販売台数(含軽)は、同31・8%減の83万6049台となり、東日本大震災が発生した11年に次ぐ低水準だった。この3カ月間の落ち込みは大きく、20年上期(1~6月)の新車販売台数も前年同期比19・8%減の220万7775台にとどまった。

日刊自動車新聞が最初の緊急事態宣言の対象となった7都府県の新車ディーラーに行ったアンケ―ト調査(4月実施)では、回答のあった68社すべてが積極的な営業活動を自粛すると回答。結果、新車販売台数に大きなダメージとなった。

ウイルスとの戦いは収束への糸口が見えておらず、新車販売現場でもウィズコロナを意識した営業体制の構築に迫られている。足元では全国的に新規陽性者数が高水準で推移する中、中部圏のダイハツディーラー社長は「9月の商戦も慎重にならざるを得ない」と話す。

一方、これまでの営業活動が難しくなる状況は「戦略を見直す良いきっかけだ」とし、ビデオ通話システムを活用した商談に取り組み始めた。こうした非接触型の営業活動を模索する動きは大都市圏を中心に活発化している。今後は、コロナ禍でも安定的に営業活動を続けるための対策が新車販売実績に影響を与えそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞8月8日掲載