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自動車産業インフォメーション

2020年8月19日

日本、EPA締結を加速 自動車産業の競争力強化

保護主義に対抗するように、日本は自由貿易の旗手として、世界各国・地域と経済連携協定(EPA)の締結を拡大している。現在、署名・発効済みの協定は21カ国・18協定に上る。

中国、韓国を含む広範な地域の関税自由化を目指す東アジア地域包括的経済連携(RCEP)や、英国との二国間協定の締結に向けた交渉も本格化している。EPAの活用は日本自動車産業の競争力強化につながる一方、協定の締結拡大に伴い関税優遇措置を受けるための手続きなども複雑化しており、自動車業界全体で解決策の提案・周知を進める。

日本貿易振興機構(ジェトロ)は、日本自動車工業会(自工会)、日本自動車部品工業会(部工会)と共同で、自動車業界でのEPAの活用状況などをテーマにしたオンラインセミナーを開いた。経済産業省からも担当者が出席し、日本を取り巻くEPAの状況や自動車業界での活用状況などを説明した。

EPAは特定の国・地域同士で貿易や投資を促進するために結ぶ協定。自由貿易協定(FTA)の要素である輸出入にかかる関税の撤廃・削減に加え、人の移動や投資、知的財産保護なども約束事項に含まれる。2019年12月末時点の世界の発効済みEPA/FTA件数は320件。

日本は02年にシンガポールとの間でEPAを発効したことをきっかけに、タイやフィリピンをはじめとする東南アジア諸国連合(ASEAN)各国などと交渉を拡大。08年に日・ASEAN、18年に11カ国加盟による環太平洋パートナーシップ協定(TPP11)、19年に日EU(欧州連合)・EPAの発効にこぎつけた。

20年7月時点で、全貿易額に占める署名・発効済国との貿易額の割合を示すFTAカバー率は52・4%に達し、中国(38・4%)やEU(33・3%)などと比べても高い水準にある。

EPAによる関税撤廃などのメリットは、日本の輸出全体の約2割を占めるとされる自動車製品の競争力強化に直結する。日EU間のEPA締結により、日本から輸出する際のEU側の関税撤廃率で、乗用車にかかる10%の関税は8年目で撤廃され、自動車部品は貿易額で9割以上が即時撤廃される。

また、年内の署名を目指すRCEPは世界最大の自動車市場である中国が含まれる。中国は日本の貿易額の約2割を占め、「関税自由化による経済効果は非常に大きい」(経産省)とされる。日本からの輸出が増えれば国内生産を拡大して、ものづくり基盤の維持にもつながる。

一方、関税優遇措置を受けるためにはEPA締結国内で最終製造したり、一定の付加価値をつけた原産品であることを証明する必要がある。

約3万点の部品からなるといわれる完成車の場合、原産地を証明する調査や手続きには多くの部品メーカーの協力が不可欠となる。EPAの拡大に伴いルールが複雑化することで、調査件数や工数が増え、関連する企業の負担も増す。

自動車業界でのEPA活用をさらに促進するため、自工会と部工会が連携して複数の解決策を立案。自動車業界の原産性調査ガイドラインを策定し、自動車メーカーの調査方法を統一することや依頼頻度を平準化することなどを定めた。部工会のホームページで公開、運用している。

加えて、原産性証明の業界共通システム「JAFTAS」を構築。調査に必要な資料の定型化などにより回答を容易にし、担当者の負担を減らす。自動車メーカーによる説明会などを通じて同システムの周知活動を行う。

「輸出の観点でEPAの利用は品質改善やコスト低減に並ぶ競争力強化の重要な方策」(自工会・特恵原産地規則分科会委員の石川裕之氏)と位置付けるEPA活用を後押しし、日本の自動車産業の競争力強化を維持する。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞8月6日掲載