日産自動車や独フォルクスワーゲン(VW)など、世界の自動車メーカーが相次ぎ企業ロゴのデザインを変更している。いずれも従来の立体的なものから平坦な二次元のデザインに変更することで、デジタルでも表現しやすいものとした。

各社ともCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応を、新しいロゴデザインで表現する。

日産のロゴは創業者である鮎川義介氏が抱いた「強い信念があればその想いは太陽をも貫く、必ず道は開ける」という意味を持つ「至誠天日を貫く」を表している。

このロゴの変更を検討し始めたのは2017年夏で、新型電気自動車(EV)「アリア」の発表をめどに構想を練ってきた。

グローバルデザイン担当のアルフォンソ・アルバイサ専務執行役員が掲げたテーマは「薄く、軽く、しなやか」。

デジタルを含めあらゆる媒体で「日産」を明確に表現するため、まずは3次元のデザインを検討し、次に2次元のイルミネーション付き、最後にイルミネーションのない2次元(白、黒)のデザインを開発した。

新しいロゴは新車ディーラーの看板からデジタル広告まで媒体に合わせて4種類を使い分ける。

7月15日に発表した新型アリアでは、20個のLEDによってロゴをイルミネーションで浮かび上がらせる演出を採り入れた。日産が新型EVで電動化を加速させる強い意志を表現している。

VWの新デザインロゴは昨年9月のフランクフルトモーターショーで初披露した。

「V(フォルクス)」と「W(ワーゲン)」を上下に組み合わせた象徴的なロゴは線が細くなり、従来のクロームメッキではなくイルミネーションで光らせることを前提にデザインした。

無駄をそぎ落とした二次元ロゴは、従来の青色と白色の組み合わせに対して青に新たなトーンの組み合わせを可能にした。また、「ムービングフレーム」と呼ぶ枠の上に柔軟に配置できるようにした。

インポーターのフォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)は今年6月、同ロゴを日本市場でも展開していくと発表。自社ウェブサイトを皮切りに、全国の正規ディーラーでも順次採用していく方針を示している。

独BMWも3月に新しいブランドコミュニケーションロゴを発表した。VWと同様にデジタル化を前提とした簡素な二次元デザインとした。BMWではさらにロゴの一部を透明とする大胆な発想を採り入れ、利用されるさまざまな媒体において表現の可能性を広げた。

デザイン的な大きな変更はないものの、SNSなどデジタル媒体での〝映え〟を狙った。

新ロゴは新しいコミュニケーションのタッチポイントでの活用を想定したもので、車両の内外装やディーラー看板には使用せず、既存のロゴをそのまま利用する。

自動車メーカーのロゴは各社が長い歴史を持つが、多くはシンプルな形状から立体的なものへと変化を遂げてきた。これはブランディングの一環としてフロントグリルにロゴを配置するために、立体的な形状が好ましかったためだ。

こうしたトレンドは、デジタル化が加速する現代において変わろうとしている。また、二次元の新しいロゴへの変更は、これまでの自動車メーカーの枠組みを越えてデジタルに強みを持つ新興勢力に対抗していく姿勢の表れでもある。