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自動車産業インフォメーション

2020年7月31日

自動車メーカー各社 豪雨や台風の被災地域へ迅速に電動車派遣

自動車メーカーが、自然災害により甚大な被害を受けた地域への支援策として電動車を派遣し、電力を供給する活動を展開している。

九州を中心に広範な影響を与えた令和2年7月豪雨の際は、トヨタ自動車や日産自動車、三菱自動車などが電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)といった給電機能付きの車を無償で貸与し、被災者の暮らしを支えている。

昨年9月に千葉県を襲った台風15号での教訓を踏まえ、国や企業、自治体による好事例の共有化や給電方法に関する周知活動も進む。

EVは現状、車種が少ないことや航続距離、車両コストなど本格普及へのハードルが高いものの、ガソリン車にはない走る蓄電池という側面を持つ。例えば、日産のEV「リーフ」の場合、停電時は一般家庭向けに2~4日分の電気を供給できるとされる。

移動手段としてだけでなく、電力インフラとしてのポテンシャルを発揮したのが、台風15号による千葉県で起きた大停電だった。強風や豪雨の影響で鉄塔が倒壊するなど大きな被害が発生し、停電被害は最大約93万戸に上った。

経済産業省や東京電力からの要請なども踏まえ、トヨタや日産、三菱自などが被災地に人員や電動車を派遣した。EVや燃料電池車(FCV)、PHV、HVから電気を取り出し、住宅の照明や家電製品向けに電力を送る支援活動が行われた。

電動車が被災地で活躍する姿が多くの人の目に映ったこともあり、ガソリン車にはないEVならではの価値を広める糸口となった。

「令和2年7月豪雨」でも自動車メーカー各社は走る蓄電池として電動車を被災地域へ送り出す支援活動を進める。

トヨタは、熊本県をはじめとする被災地に約90台の外部給電機能付きHVやPHVを無償貸与する。自治体の要望に応じ、「ヤリス」や「プリウス」など対象モデルを役立ててもらう。「事業地であるなしに関わらず、被災地の方をスピーディーに支援していく」とし、販売店などと連携した支援活動を進める。

日産は、熊本県八代市にある球磨川温泉鶴之湯旅館へリーフを派遣し、給電活動を行った。日産はこれまでに、さまざまな自治体とEVを使った災害協定を締結してきたが、今回はこの枠組みにとらわれず被災地のニーズに柔軟に対応した。

三菱自は熊本県人吉市などにPHV「アウトランダーPHEV」5台を送り、市内商店街の被害調査などに活用してもらう。

地震や台風などの自然災害に直面することが多い日本にとって、高容量バッテリーを搭載した電動車は、有事の際にライフラインを支える心強いパートナーとなる。一方、台風15号を通じて、電動車の給電機能の認知度が低いことや外部給電器の普及などの課題も明らかになった。

こうした経験を踏まえ、政府や自動車メーカー、電力会社などでつくる「電動車活用社会推進協議会」は、災害時に電動車を使う際のマニュアルを策定して公表した。

車種ごとの外部給電機能や使用方法、注意点などをまとめ、緊急時でも多くの人がスムーズに給電作業できるよう情報発信にも工夫を凝らす。平時・緊急時に役立つ電動車の新たな価値が浸透すれば、今後の普及にも弾みがつきそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞7月28日掲載