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自動車産業インフォメーション

2020年7月29日

損保業界、次世代交通見据えて 鉄道、大学などと連携

自動車産業では、各分野でMaaS(サービスとしてのモビリティ)やCASE(コネクテッド、自動化、シェア、電動化)への対応が進む。MaaSは、自動車を社会の中にある1つの交通インフラと捉え、電車やバスなどのモビリティと組み合わせることで、効率的な移動の実現を目指す。

「所有から使用へ」という消費者の意識や社会需要の変化は、自動車損害保険業界にも波及している。各社は、データを収集・解析するプラットフォーマー、鉄道会社、大学との産学連携などさまざまな業態と連携し、新たなサービスや商品開発に取り組んでいる。

損害保険ジャパンは商品開発で「所有から使用へ」の変化への対応を進める。移動に関するハードウェアやアプリなどを開発するスマートドライブと業務提携を結び「ヒトにつくモビリティ保険・サービス」の開発・検討を開始した。

スマートドライブが保有する移動に関するデータと、損保ジャパンの移動手段別の事故、トラブルデータを活用。これまで自動車を対象に付帯していた補償を、移動する人を中心とした商品へシフトすることで、MaaS社会の消費者ニーズに対応する構えだ。

東日本旅客鉄道(JR東日本)と協業を進めるのは、あいおいニッセイ同和損害保険と東京海上日動火災保険の2社。あいおいニッセイ同和損保は、次世代の社会インフラの普及を見据え、地方自治体などとの連携を進める。

その一環として、JR東日本と共に米国のスタートアップ企業コネクトIQラボズが開発したアプリを活用し、地方活性化に向けた検証を行う。アプリは、スマートフォンを介して得られるユーザーの位置情報から移動手段を自動判別して移動ポイントを付与、ポイントに応じたクーポンを提供する機能を有する。

システムを通じて蓄積したユーザーの移動手段や行動範囲のデータを連携する自治体や企業に提供する。さまざまな付加価値を創出する計画で、2020年10月までに実証実験の概要を決定する予定だ。

東京海上日動は、これまで培ったリスクノウハウや事故データ、事故対応ネットワークなどを活用して、MaaSの促進に取り組む。共同事業では、20年冬からJR東日本が提供する移動の検索・手配・決済をまとめたMaaSアプリ「リンゴパス」と保険サービスの連携実証を行う。

リンゴパスと連携することで、保険加入者が事故に遭遇した際の代替移動手段の手配を迅速かつ柔軟に行える体制の構築を目指す。キャッシュレスやペーパーレス化が図れ、スムーズな対応が可能になるとする。

三井住友海上火災保険は産学連携を進め、はこだて未来大学のAI(人工知能)スタートアップ企業である未来シェアと提携し、地域の交通課題解決に当たった。未来シェアが開発した乗り合い車両の自動配車・ルート決定システムで得られた知見をもとに、共同で新たなモビリティサービスを検討。

20年2月には、石川県内のタクシー会社などと共同で、未来シェアのシステムを使用してマイカー通勤する社員が相乗り出退社を行い、域内中心部の渋滞緩和などの効果を検証。1日当たり5・8台の自動車の利用低減が達成できたという。

各社はCASE、MaaS時代の商品開発のための専門部署を設けており、社内の各セクションを横断する形で次世代のニーズをリサーチしている。新たなサービスを形にする体制が整っており、今後も協業による商品・サービスの創出は加速しそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞7月22日掲載