日本自動車部品工業会(部工会、尾堂真一会長)は、部品メーカー各社がEPA(経済連携協定)を活用しやすいように業務支援体制を整える。EPAによる関税削減を利用する際に必要な原産地証明関連業務の負担を軽減するクラウドシステムを導入するほか、各種問い合わせに応じる窓口を設置する。
自動車業界のEPA活用は広がるものの、国によって異なる複雑なルールや手続きなどが障壁になっている側面もある。部工会はシステム導入を含めたEPA関連業務をサポートすることで、日本製の車両はもとより、サプライチェーン全体の競争力強化につなげていく。
自動車メーカーや部品サプライヤーなどが共同で使う自動車業界標準システム「JAFTAS(ジャフタス)」の利用を9月にも始める。ジャフタスは東京共同トレード・コンプライアンスとNTTデータが開発したシステムで、原産性調査を行う際の業務負担軽減を目的に開発された。
原産性調査の依頼元、調査を行う依頼先の双方における業務負担を軽減する機能を持つのが特徴。原産性調査の依頼と回答、原産性判定の支援、根拠書類の作成と保管機能などを備える。
合わせて、原産性調査のやり方やジャフタスの利用方法などを指南する「サポートデスク」も設置する。ジャフタスの利用料は調査依頼元が負担する仕組みとし、依頼先の費用負担は発生しないようにしたこともポイントとなっている。
自動車業界における原産性調査は、他業界にはない特有の難しさを持つ。3万点にも及ぶ構成部品の多さ、階層が多く多様なサプライチェーンなどが、原産性調査を複雑化している状況だ。
また、調査の依頼先はサプライチェーンの末端になるほど企業規模が小さくなり、複雑な原産地証明に関する知識やノウハウ、対応できる人員も限られるのが実情。調査の依頼と回答もメールが中心となっており、ヒューマンエラーが発生しやすい状況にもある。
部工会はこうした課題を解消し、自動車業界全体としてEPAの利用促進を図る環境整備を進めてきた。ジャフタス導入の前提となる自動車業界を統一したルール作りはその一環だ。
部工会は日本自動車工業会とともに、自動車メーカーなど調査依頼元ごとに異なっていた調査方法や回答方法の統一、調査依頼頻度の平準化、自動車メーカーと部品メーカーの役割分担の明確化といった標準化作業を進めてきて、9月以降これを軌道に乗せる考えだ。