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自動車産業インフォメーション

2020年7月6日

自動車メーカー各社の株主総会 コロナ対応シナリオ説明に時間

自動車メーカー各社の定時株主総会が6月29日までに終了した。新型コロナウイルスの感染拡大を警戒する異例の状況下でも、株主からの生の声を聞く貴重な場として、感染防止策を徹底した上で開かれた。コロナ禍で事業環境の先行きが見通せない中、この危機をいかに乗り越え成長していくかという各社のシナリオ説明に多くの時間が割かれた。

前期(2020年3月期)決算を受けた配当への考え方に対しても株主から質問が相次いだ。

 

3月期決算の自動車メーカーの定時株主総会は、例年と異なりコロナ影響の中で開催を迎えた。感染第2波が懸念される状況であっても「株主総会は株主の皆さまとの貴重な対話の場」(日野自動車・下義生社長)として、防止策を講じた上で開催した。

トヨタ自動車が出席株主を例年の10分の1以下に抑えたほか、インターネット議決の呼びかけや議案審議と質疑時間を短縮するなどさまざまな工夫を凝らした。

コロナ禍で自動車業界を取り巻く環境が激変し、各社の業績にも影響が表れ始めている。感染症の収束時期が不透明な中、今後の経営の舵取りについて株主から関心が寄せられた。

日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は、新たに公表した事業構造改革計画について問われ「社長就任時に国内すべての工場に足を運び、販売会社も訪問して従業員の声を聞き入れて計画をつくった。従業員一人ひとりは強い。経営者と従業員が一体感を持たないと日産ブランドは伸びず信頼を得られないと痛感した。ゆるぎなく断行する」と強い意志を示した。

新型車を国内市場に積極投入し、その勢いをグローバルに波及させる。

ホンダは感染症問題の収束後までを見据え、人の価値観の変化合わせた新たなモビリティサービス群「eMaaS」に期待感を示す。「アフターコロナにおける新しい世界を提案する」(八郷隆弘社長)シナリオを描く。

日野の下社長はコロナ禍での社員の安全確保や物流を下支えする支援策を説明。国内販売会社は感染予防を徹底しながら通常稼働することなどにより「輸送・物流で社会を支えるお客さまを支える」と話した。

今期の業績見通しに対するメーカー側の考え方を問う質問も多く出た。スバルの中村知美社長は今期見通しを8月上旬の発表を目指すとした上で「感染第2波を含め市場予測は誰にもわからない。こういう時期だからこそ『こうしたい』という経営の意思が非常に大事」と述べ、黒字確保を経営陣で確認したことを明かした。

トヨタの豊田章男社長は、営業利益5千億円の黒字見込みを発表した理由について「自動車産業は多くの企業のお世話になって成り立っている産業。計画を出さないということは、仕入先をはじめいろいろな方々がお悩みになると考え、一つの基準となる計画を出したのが本音」と説明した。

6月中に総会を開いた自動車メーカー9社のうち、19年度の年間配当を増配・前年度と同水準としたのは5社、減配は4社。同年度の期末配当を見送った日産の内田社長CEOはコロナ影響や事業構造改革の推進、将来への投資の重要性を説明した上で「できるだけ早く還元を再開できるよう努力していく」と語った。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞7月1日掲載