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2020年7月3日

NEDO提言 コロナ禍後のイノベーションの方向性

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO、石塚博昭理事長)は6月24日、新型コロナウイルス感染症の発生を機とした社会変化を見据えて様々な分野から発信された情報を整理・分析し、レポート「コロナ禍後の社会変化と期待されるイノベーション像」にまとめ公表した。

研究機関や有識者の見解などをもとに「コロナ禍後に起こる社会変化」「コロナ禍後の社会に期待されるイノベーション像」などを検証。その上で製造業の開発・サプライチェーン、モビリティ、エネルギーシステムなど産業分野ごとに「新しい社会様式」を実現するためのイノベーションの方向性を提言した。

レポートでは、まずコロナ禍が人々の社会活動の基盤であるコミュニケーションや移動、サプライチェーンなどに制限を課しており、これらの困難を克服するためリモートワークをはじめとしたデジタルシフトの拡大によって新しい社会様式を確立することが欠かせないとした。

ただ、そのイノベーション像は世界的な社会課題となり、非常に広範なテーマを抱えている。

こうした中、NEDOは産業領域ごとに新しい社会様式づくりの方向性をまとめたレポートを作成。レポートを基に各分野で議論を深めてもらうとともに、日本が世界的なイノベーションをリードするための産官学連携の支援に取り組むことにした。

コロナ禍後に起こる仕事・産業の変化については「バーチャル会議による3Dデータの可視化」「ホログラム(立体映像)技術でバーチャル空間上に一緒にいるように見せる技術」などによってテレワークが推進されていくとした。

仮想現実(VR)により商品そのものの質感を再現する技術、データ転送と3Dプリンター造形によって商品形状を再現する技術などがイノベーション像の一端を示す技術という。

製造・生産現場では、デジタルによる拡張技術を用いて、生産ラインを管理する人員を減らし一人あたりの生産効率を2倍以上に引き上げることを提言。アバター(自分の分身)ロボットや人工知能を活用することが業務効率改善と省人化の両立のポイントになるとした。

サプライチェーンでは人材や生産品が中国から新興国へシフトし分散化が進むほか、情報収集や需要変動予測が高度化。ただ、生産システムのコストダウンとサプライチェーンの強靭化の両立が課題になるため、その解決に向けた国家的な戦略の展開が期待されるとした。

中小製造業のイノベーションでは、コロナ禍の長期化による経営への打撃を抑えるための支援策、企業の集積によるスマート化、日本にしかないコア技術を持つ企業の保護(海外企業による買収阻止)、グローバル人材の育成が鍵を握るとした。

インフラ、モビリティ分野では自動運転を生かしたMaaS(サービスとしてのモビリティ)によって渋滞・交通事故の減少、運送の効率化を実現し経済損失を低減することがスマートシティーづくりの根幹になるとみている。

また、デジタルシフト進展後の成長見通しでは、伸びる業界に通販、輸送、ロボットなど、打撃を受ける業界に賃貸オフィス、鉄道・航空、輸送機器、服飾などをそれぞれ挙げた。同レポートはNEDO技術戦略研究センター(TSC、岸本喜久雄センター長)がまとめた。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞6月29日掲載